「ファーウェイのHarmonyOSってオープンソースなんですよね」と聞かれて、正確に答えられるでしょうか。答えは「半分正しくて、半分違う」です。オープンソースなのはOpenHarmonyで、HarmonyOSはそれを土台にしたHuaweiの商用製品。しかもHarmonyOSは途中で中身が入れ替わっており、世代によってAndroidアプリが動いたり動かなかったりします。
日本語で書かれた情報はこのあたりが混ざっていることが多く、「鴻蒙(ホンモン)=中国版Android」「OpenHarmonyを入れればHarmonyOSのアプリが動く」といった誤解が定着しています。装置にどのOSを載せるかを検討する立場からすると、この混乱は実害があります。調達先に確認する内容も、法務が気にするライセンスも、開発者が学ぶ言語も、どれを指しているかで全部変わるからです。
この記事では、組み込み機器や業務システムの技術者を対象に、OpenHarmony / HarmonyOS / HarmonyOS NEXT の関係を、OpenHarmony公式ドキュメントとHuaweiの公式発表という一次情報をもとに整理します。「装置に載せる選択肢になるか」という実務判断は、姉妹記事の装置に載せるOSとしてOpenHarmonyは選択肢になるかで扱います。
1. まず結論
- OpenHarmonyはOpenAtom財団(開放原子開源基金会)が育成・運営するオープンソースOSプロジェクトです。Huaweiの製品ではなく財団のプロジェクトで、ソースは公開リポジトリから誰でも取得できます。12
- HarmonyOSはHuaweiの商用OS製品で、OpenHarmonyとは別物です。OpenHarmonyを土台にしつつ、Huawei独自のフレームワーク・アプリ配信基盤・クラウドサービスが載っています。HarmonyOSのソース全体が公開されているわけではありません。
- HarmonyOSは世代で中身が変わりました。1〜4.x世代はAOSP(Android Open Source Project)とOpenHarmonyを組み合わせた構成でAndroidアプリが動作しましたが、HarmonyOS NEXT(=HarmonyOS 5)以降はAOSP由来のコードが取り除かれ、Androidアプリは動きません。3
- 「NEXT」という呼称はHarmonyOS 6で使われなくなりました。2026年6月のHDC 2026ではHarmonyOS 7の開発者ベータが発表され、あわせて「OpenHarmonyは100を超える商用バージョンをリリースした」と説明されています。4
- OpenHarmonyは1つのOS製品ではなく「3つのシステムタイプ」を持つ枠組みです。最小128KiBのMCU向け(軽量システム)から128MiB以上のアプリケーションプロセッサ向け(標準システム)まで、同じ体系の中で構成を切り替えます。5
- ライセンスはコードがApache License 2.0を中心とした構成です。LiteOS-AカーネルはBSD 3条項、ドキュメントはCC BY 4.0と、部分ごとに異なります。採用時は該当リポジトリのLICENSEを個別に確認してください。678
- コミュニティの保守期間はReleaseブランチ2年、LTSブランチ3.5年です。しかもLTSブランチは2021年9月の3.0-LTSが最後で、3.1以降に公開されたブランチはすべてReleaseです。装置の10年ライフサイクルとは前提が合いません。91011
- HarmonyOSのスマートフォンとアプリ市場は、事実上中国中心です。Huaweiのグローバル消費者向けサイトは2026年7月現在もHarmonyOS 2の紹介ページで、HarmonyOS 6は中国向けサイトで案内されています。ただしウェアラブルなどには中国国外でもHarmonyOS 5系・6系が配信されており、「HarmonyOS 5以降=中国限定」ではありません。121314
- 欧州にはOpenHarmonyベースの別系統があります。Eclipse FoundationのOniroプロジェクトが、OpenHarmonyを土台に欧州・グローバル市場向けの拡張を進めています(2026年7月時点でIncubating)。15
2. 系譜を1枚で整理する
まず全体像です。「鴻蒙(HarmonyOS)」と呼ばれるものには、少なくとも3つの異なる実体があります。
| 呼び名 | 実体 | 誰のものか | ソース公開 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| OpenHarmony | オープンソースOSプロジェクト | OpenAtom財団1 | 公開(Apache 2.0ほか)6 | IoT機器、産業機器、組み込み、教育 |
| HarmonyOS 1.0 | Huaweiの商用OS(OpenHarmony公開前の世代) | Huawei | 非公開 | スマートスクリーン(Honor Vision) |
| HarmonyOS 2〜4.x | Huaweiの商用OS(AOSP+OpenHarmony混成) | Huawei | 非公開(土台のOpenHarmony部分のみ公開) | Huawei製スマートフォン・タブレット等 |
| HarmonyOS NEXT / 5 / 6 / 7 | Huaweiの商用OS(AOSPを除去) | Huawei | 非公開 | Huawei製スマートフォン・PC・車載等 |
そして最近もう1つ、押さえておくと視野が広がる系統があります。
| 呼び名 | 実体 | 誰のものか |
|---|---|---|
| Eclipse Oniro for OpenHarmony | OpenHarmonyを土台にした欧州発ディストリビューション | Eclipse Foundation15 |
言い方を変えると、OpenHarmonyは「素材」、HarmonyOSとOniroは「その素材で作られた別々の製品」です。Linuxカーネルに対するRed Hat Enterprise LinuxとDebianのような関係を思い浮かべると、粒度感が近くなります。ただしLinuxと違って、OpenHarmonyはカーネルだけでなくUIフレームワークやアプリモデルまで含む、かなり垂直に積み上がった一式である点が異なります。
3. OpenHarmonyの実体 ── 何が入っているのか
OpenHarmony公式ドキュメントは、このプロジェクトを「OpenAtom財団が育成・運営するオープンソースプロジェクトで、全シナリオのスマートデバイス向けに、オープンソースの分散OSフレームワークを構築することを目的とする」と説明しています。1
4層のアーキテクチャ
アーキテクチャは下から順に、カーネル層・システムサービス層・フレームワーク層・アプリケーション層の4層です。1
- カーネル層: マルチカーネル設計で、デバイスのリソース制約に応じてLinuxかLiteOSを選びます。カーネル抽象層(KAL)が実装差を隠蔽し、上位層に共通のプロセス・メモリ・ファイルシステム・ネットワーク・周辺機器管理を提供します。ドライバはHDF(Hardware Driver Foundation)という独自の統一ドライバ基盤で書きます。
- システムサービス層: 分散ソフトバス(DSoftBus)、分散データ管理、分散スケジューラ、マルチモーダル入力、グラフィックス、セキュリティ、AIなど。
- フレームワーク層: C/C++/JS向けのアプリケーションフレームワークとAbilityフレームワーク、JS向けのArkUIフレームワーク。
- アプリケーション層: システムアプリとサードパーティアプリ。
ここで重要なのは、「マルチカーネル」という設計がOpenHarmonyの性格を決めているという点です。同じ名前のOSでありながら、MCUの上ではLiteOS-Mが、リッチな機器の上ではLinuxカーネルが動きます。「OpenHarmonyのカーネルは何ですか」という問いには「どのシステムタイプの話ですか」と聞き返す必要があります。
3つのシステムタイプ
公式ドキュメントは基本システムタイプを3つ定義しています。5
| システムタイプ | プロセッサ | 最小メモリ | 提供される機能 | 想定製品 |
|---|---|---|---|---|
| 軽量システム(Mini) | Arm Cortex-M、32ビットRISC-VなどのMCU | 128 KiB | 軽量ネットワークプロトコル、軽量グラフィックス、IoTバス向け読み書きコンポーネント | 接続モジュール、センサー、ウェアラブル |
| 小型システム(Small) | Arm Cortex-Aなどのアプリケーションプロセッサ | 1 MiB | より高いセキュリティ機能、標準グラフィックスフレームワーク、動画エンコード/デコード | IPカメラ、ドアスコープ、ルーター、ドライブレコーダー |
| 標準システム(Standard) | Arm Cortex-Aなどのアプリケーションプロセッサ | 128 MiB | 完全なアプリケーションフレームワーク、3D GPU、ハードウェアコンポーザー、豊富なアニメーション | 高機能な画面付き家電 |
128 KiBから始まる、というのがこのOSの独特なところです。公式ドキュメントも「数百KiBからGiB級までのRAMに対応する」と書いています。1 コンポーネント化された設計で、必要のないコンポーネントを構成から外して積み上げる方式になっています。
分散機能という中核コンセプト
OpenHarmonyの特徴として公式が最初に挙げるのは、DSoftBus(分散ソフトバス) を中心とした機器間連携です。1 近距離の機器同士を発見・接続・ネットワーク化し、通信方式によらずデータを転送する共通基盤で、その上に分散データ管理(機器をまたいだデータの同期)と分散スケジューラ(機器をまたいだアプリの起動・移行)が載ります。
この「複数の機器を1つのスーパーデバイスとして扱う」思想が、HarmonyOSのスマートフォン・タブレット・車載の連携体験の土台にもなっています。逆に言えば、単体の装置に組み込んで使うだけなら、OpenHarmonyの目玉機能の半分は使わないことになります。この点は採用判断で効いてきます。
開発ボードとハードウェア
コミュニティが対応を公表している開発ボードは22機種です。16 標準システム向けにはRockchip RK3568搭載のHiHope HH-SCDAYU200やNXP i.MX8M Mini搭載のMILOS_Standard0、小型システム向けにはSTM32MP157A搭載のBearPi-HM Micro、軽量システム向けにはHi3861やSTM32F407、ESP32、RISC-VのHPM6750など、中国系SoCだけでなくSTやNXPのチップも含まれています。産業用途を想定した記述がある製品もあり、たとえばMILOS_Standard0は「産業・医療向けの高性能計測機器、産業制御とHMI、交通、防災、ビル」が用途として挙げられています。16
4. HarmonyOSの実体 ── AOSP混成期とNEXT以降
HarmonyOSはHuaweiの商用OS製品です。ここで押さえるべきは、同じ「HarmonyOS」という名前で世代ごとに中身が違うことです。
- HarmonyOS 1.0(2019年): 最初に載ったのはスマートフォンではなく、スマートスクリーン(Honor Vision)でした。OpenHarmonyがOpenAtom財団に寄贈される前の世代で、スマートフォン向けOSとして流通していたわけではありません。17
- HarmonyOS 2〜4.x(2021〜2024年): スマートフォンに展開された世代です。AOSPとOpenHarmonyを組み合わせた構成で、この世代の端末はAndroidアプリ(APK)とHarmonyOSアプリの両方を動かせました。日本で「HarmonyOSはAndroidの中国版でしょう」という理解が広まったのは、この世代の実態がそう見えたためです。3
- HarmonyOS NEXT(=HarmonyOS 5、2024年): AOSP互換レイヤーとAndroidライブラリが取り除かれ、Androidアプリは動かなくなりました。動くのはHarmonyOSネイティブアプリだけです。3 ここで言うネイティブアプリはArkTSだけを意味しません。C/C++で書くNative API(NDK)のモジュールを組み合わせられますし、Huaweiが自社開発した言語Cangjie(仓颉)もHarmonyOS向けアプリ開発の選択肢として提供されています。18
- HarmonyOS 6以降(2025年〜): 「NEXT」という呼称が外れ、単にHarmonyOS 6になりました。2026年6月12日のHDC 2026(東莞)ではHarmonyOS 7の開発者ベータ開始が発表され、HarmonyOS 6の端末数が6,600万台を突破したこと、登録開発者が1,100万人を超えたこと、アプリストアで取得できるアプリ・サービスが40万を超えたこと、HarmonyOSが中国で第2位のスマートフォンOSになったことが公表されています。4
同じ発表の中で、HuaweiはOpenHarmony側についても「100を超える商用バージョンがリリースされた」と述べています。4 つまりHuaweiにとってのOpenHarmonyは、自社スマートフォンの土台であると同時に、他社が産業向け製品を作るための供給元でもあるという位置づけです。
地域性は「端末の種類」で分けて考える
日本から見たときに実務上効くのが地域性ですが、ここは端末をひとまとめにすると判断を誤ります。分けるべきはスマートフォンとアプリ配信のエコシステムと、ウェアラブルなど周辺デバイスのファームウェアです。
- スマートフォンとアプリ市場は中国中心です。HarmonyOS 6の製品ページは中国向けサイトに用意されている一方、13 Huaweiのグローバル消費者向けサイト(consumer.huawei.com/en/harmonyos/)は2026年7月時点でHarmonyOS 2の紹介ページのままです。12 NEXT系スマートフォン向けのHarmonyOSネイティブアプリとその配信市場は、実質的に中国国内の話と考えるのが妥当です。
- 一方、HarmonyOSというブランドは中国国外の端末にも載っています。Huaweiはグローバル市場のスマートウォッチにもHarmonyOS 5系・6系のファームウェア更新を配信しており、「HarmonyOS 5以降=中国国内限定」とまでは言えません。14
したがって、日本の企業が「HarmonyOSアプリを作って配信する」という話をするなら、それは中国市場向けの事業判断とセットになります。一方でOpenHarmonyのほうは地域を問わず誰でもソースを取得して使えるので、この2つは意思決定として完全に別物として扱うべきです。
5. 「OpenHarmonyアプリ」と「HarmonyOSアプリ」は同じか
短く言えば「同じ系譜だが、同じものではない」です。
共通しているのは、ArkTS(TypeScriptを拡張した宣言的UI向け言語)とArkUI(宣言的UIフレームワーク)、Ability(アプリの実行単位)というアプリモデルの骨格です。OpenHarmony 6.0 Releaseのリリースノートを見ると、ArkUIのレイアウト機能拡張、ArkWebのChromiumカーネルを114から132へ更新、AppServiceExtensionAbilityの追加、キオスクモード対応など、HarmonyOSの機能追加とよく似た項目が並びます。19
違うのは周辺です。HarmonyOSアプリはHuaweiのHarmonyOS SDKとDevEco Studio、そしてAppGalleryという配信基盤とHMS(Huawei Mobile Services)のクラウドAPIを前提に作られます。OpenHarmonyにはこれらがありません。したがって、
- OpenHarmonyを載せた自社装置に、AppGalleryのアプリを入れることはできません。
- HarmonyOS向けに作ったアプリが、OpenHarmony実機でそのまま動く保証もありません。依存しているAPIがHuawei拡張なのかOpenHarmony標準なのかを1つずつ確認する必要があります。
装置にOpenHarmonyを採用するなら、その上で動くアプリは自社(または採用したディストリビューションのベンダー)が作る前提で計画するのが正解です。「中国製のアプリ資産が使える」という期待で採用を判断すると外します。
6. バージョンとAPIレベルの読み方
OpenHarmonyのバージョンにはAPIレベルが対応づけられており、公式ドキュメントリポジトリのREADMEに一覧があります。20
| OpenHarmonyバージョン | APIレベル | ドキュメント上の扱い |
|---|---|---|
| master | ─ | 最新の開発版 |
| 6.0 Release | 20 | 最新版 |
| 5.1.0 Release | 18 | 最新版 |
| 5.0.3 | 15 | 最新版 |
| 5.0.2 | 14 | 最新版 |
| 5.0.1 | 13 | 最新版 |
| 5.0.0 Release | 12 | 最新版 |
| 4.1 Release | 11 | 保守終了(Historical Versions No Longer Maintained) |
| 4.0 Release | 10 | 保守終了 |
| 3.2 Release | 9 | 保守終了 |
この一覧はドキュメントリポジトリのREADMEに載っているものですが、同じリポジトリのリリースノート索引にはさらに新しい6.1 Release(2026年3月8日)や6.0.0.1 / 6.0.0.2が並んでいます。11 公式ドキュメント内でも「最新版」の記載が追いついていないことがあるので、バージョンを確定させるときはREADMEだけでなくリリースノート索引も見てください。
HarmonyOS側にも同じくAPIレベルが振られており、Huaweiの開発者ドキュメントでバージョンごとのリリースノートが公開されています。21 番号体系が近いため混同しやすいのですが、OpenHarmonyのAPI Level 20とHarmonyOSのAPI Level 20は、同一のAPI集合を指すとは限りません。仕様を確認するときは、どちらのドキュメントを読んでいるかを常に意識してください。
7. 保守期間 ── 装置屋がいちばん先に確認すべき数字
OpenHarmonyコミュニティは、ブランチの生命周期を次のように定義しています。9
- Releaseブランチの生命周期は2年(主動保守1年+受動保守1年)
- LTSブランチの生命周期は3.5年(主動保守2年+受動保守1.5年)
- 主動保守期間は、コミュニティがタグ版を計画的に出し、不具合とセキュリティ脆弱性を修正する期間
- 受動保守期間は、タグ版の計画・リリースを行わず、重大以上のセキュリティ脆弱性と不具合のみを修正する期間
そして、実際に公開されているブランチの保守スケジュールは次のとおりです。10
| ブランチ | 種別 | リリース | 主動保守終了 | 保守終了 |
|---|---|---|---|---|
| 1.0.1-Release | Release | 2021-03-30 | 2022-03-30 | 2023-03-30 |
| 3.0-LTS | LTS | 2021-09-30 | 2023-09-30 | 2025-03-30 |
| 3.1-Release | Release | 2022-03-30 | 2023-03-30 | 2024-03-30 |
| 3.2-Release | Release | 2023-04-09 | 2024-04-09 | 2025-04-09 |
| 4.0-Release | Release | 2023-10-26 | 2024-10-26 | 2025-10-26 |
| 4.1-Release | Release | 2024-03-30 | 2025-03-30 | 2026-03-30 |
この表から読み取れることは3つあります。
- LTSブランチは3.0-LTS(2021年9月)が最後です。LTSはそれ以前にもあり、1.1.0 LTS(2021年4月)とその系列(1.1.x LTS)がリリースノートに残っています。11 しかし3.1以降に公開されたブランチはすべてRelease、つまり保守は2年です。
- 表に載っているブランチは、2026年7月時点ですべて保守が終了しています。5.x系と6.0 Releaseはこの表にまだ載っていません。
- 10年動かす装置の前提とは、桁が違います。Windows 11 IoT Enterprise LTSC 2024が2034年10月まで10年サポートされるのと比べると、設計の思想がそもそも違うことがわかります。
これはOpenHarmonyが劣っているという話ではなく、「コミュニティ版をそのまま製品に載せて放置する」使い方を想定していないということです。実際の産業採用では、商用ディストリビューションのベンダーが自社で分岐を保守し、その保守を有償で売る形になります。Huaweiが「OpenHarmonyは100を超える商用バージョンをリリースした」と言っているのは、この層の厚みを指しています。4
8. ライセンスと入手経路
ライセンス
OpenHarmonyは単一ライセンスのプロジェクトではありません。リポジトリごとに異なります。
| 対象 | ライセンス |
|---|---|
ビルドシステム(build)、ArkUIエンジン(arkui_ace_engine)など多くのコンポーネント |
Apache License 2.06 |
LiteOS-Aカーネル(kernel_liteos_a) |
BSD 3条項ライセンス7 |
| 標準システムのLinuxカーネル部分 | Linuxカーネルのライセンス(GPLv2)に従う |
公式ドキュメント(docs) |
Creative Commons Attribution 4.08 |
製品に組み込む場合、自社が実際にリンクする範囲のリポジトリのLICENSEを1つずつ確認するのが原則です。「OpenHarmonyはApache 2.0だから安心」とまとめてしまうと、カーネル部分のGPL義務を見落とします。
ソースの入手
ソースはAndroidと同じrepoツールで取得します。公式ドキュメントに記載されている手順は次のとおりです。2
repo init -u https://gitcode.com/openharmony/manifest.git -b master --no-repo-verify
repo sync -c
repo forall -c 'git lfs pull'
ホスティングはgitcode.com、gitee.com、GitHubのミラーが案内されており、SSH・HTTPSの両方が用意されています。2 リリース版を固定して取得したい場合はブランチ名をOpenHarmony-6.0-Releaseのような版名に、あるいはタグ(refs/tags/OpenHarmony-v6.0-Release)に切り替えます。特別な登録や許諾の手続きはありません。
実機のボードを買う前に構造を確認したいなら、QEMU上で動かす経路も用意されています。device_qemuリポジトリはArm Virt(LiteOS-A / Linux)、Cortex-M4(mps2-an386)、Cortex-M55(mps3-an547)、RISC-V(riscv32_virt)、Xtensa(esp32)、C-SKY(SmartL_E802)のエミュレーション手順を持っています。22
9. 欧州系の分岐 ── Eclipse Oniro
日本の技術者にとって見落としやすいのが、Eclipse Foundationが運営するOniroプロジェクトです。プロジェクトページには「Eclipse Oniro for OpenHarmonyは、OpenAtom財団が育成・運営するオープンソースプロジェクトであるOpenHarmonyの基盤層の上に構築される」と明記されており、欧州およびグローバル市場向けにReact Nativeサポート、Eclipse TheiaベースのIDE、Servoウェブエンジンなどを追加する方針が示されています。ライセンスはApache 2.0とMIT、プロジェクト状態は2026年7月時点でIncubatingです。15
「中国発のOSは調達方針上むずかしい」という制約がある組織にとって、欧州財団のガバナンス下にある同系統の選択肢が存在することは、検討の幅として知っておく価値があります。ただしIncubating段階である点、コミュニティ規模がOpenHarmony本体とは比較にならない点は、そのまま採用リスクになります。
10. まとめ ── 3つを分けて話す
- OpenHarmonyはOpenAtom財団のオープンソースOSプロジェクト。128 KiBのMCUから128 MiB以上のリッチデバイスまでを1つの体系でカバーし、ソースは誰でも取得できます。装置に採用するかどうかを検討する対象はこれです。
- HarmonyOSはHuaweiの商用OS製品。1〜4.x世代はAOSPとの混成でAndroidアプリが動きましたが、NEXT(=5)以降はAOSPが外れ、ArkTSアプリだけの世界になりました。事実上、中国市場向けの製品です。
- Eclipse OniroはOpenHarmonyを土台にした欧州発の系統。まだIncubating段階ですが、ガバナンスの所在という観点では別の選択肢です。
この3つを混ぜずに話せるようになると、社内での議論がぐっと具体的になります。「HarmonyOSを採用しますか」ではなく、「OpenHarmonyの標準システムを、どの商用ディストリビューションの保守付きで、どのSoCに載せますか」という問いに翻訳できるからです。その先の実務判断 ── 保守期間・ハードウェア選択肢・開発環境・調達性を、Windows IoTや組込みLinuxと並べて比較する話は、姉妹記事に分けました。
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参考リンク
-
OpenHarmony Documentation, OpenHarmony Project. OpenHarmonyがOpenAtom Foundationによって育成・運営されるオープンソースプロジェクトであること、カーネル層/システムサービス層/フレームワーク層/アプリケーション層の4層アーキテクチャ、LinuxとLiteOSのマルチカーネル設計とKAL、HDFドライバ基盤、DSoftBus・分散データ管理・分散スケジューラ・デバイス仮想化の各機能、数百KiBからGiB級までのRAMに対応する旨について。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
OpenHarmony Documentation, Source Code Acquisition. repoツールのセットアップ手順、
repo init/repo sync -c/repo forall -c 'git lfs pull'によるソース取得、gitcode.com・gitee.com・GitHubの各ミラーとSSH/HTTPSの選択肢について。 ↩ ↩2 ↩3 -
Wikipedia, HarmonyOS 5(二次情報). スマートフォンに展開されたHarmonyOS 2〜4.x世代がAOSPとOpenHarmonyを統合した構成でAndroidアプリを実行できたこと、HarmonyOS NEXT(=HarmonyOS 5)でAOSP互換レイヤーとAndroidライブラリが取り除かれAndroidアプリが動作しなくなったこと、HarmonyOS 6以降で「NEXT」の呼称が使われなくなったことについて。Huaweiの公式ドキュメントは動的生成のため直接引用できず、二次情報として参照している。 ↩ ↩2 ↩3
-
華為, HarmonyOS 7 開発者Beta 正式启动,全场景智能操作系统再升级. 2026年6月12日のHDC 2026(東莞)でHarmonyOS 7の開発者ベータが発表されたこと、HarmonyOS 6の端末数が6,600万台を突破したこと、登録開発者が1,100万人超・アプリストアで取得可能なアプリとサービスが40万超であること、HarmonyOSが中国で第2位のスマートフォンOSであること、およびOpenHarmonyが100を超える商用バージョンをリリースしたと説明されていることについて。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
OpenHarmony Documentation, Quick Start Overview. 軽量システム(MCU、最小128 KiB)、小型システム(Cortex-A、最小1 MiB)、標準システム(Cortex-A、最小128 MiB)という3つの基本システムタイプの定義と、それぞれが提供する機能・想定製品について。 ↩ ↩2
-
OpenHarmony, arkui_ace_engine LICENSE および build LICENSE. ArkUIエンジンおよびビルドシステムのリポジトリがApache License 2.0で配布されていることについて。 ↩ ↩2 ↩3
-
OpenHarmony, kernel_liteos_a LICENSE. LiteOS-AカーネルがBSD 3条項ライセンス(再頒布時の著作権表示保持、バイナリ頒布時の免責条項再掲、権利者名による推奨表示の禁止)で配布されていることについて。 ↩ ↩2
-
OpenHarmony, docs LICENSE. 公式ドキュメントリポジトリがCreative Commons Attribution 4.0 Internationalで提供されていることについて。 ↩ ↩2
-
OpenHarmony, OpenHarmony Version Lifecycle Management. Releaseブランチの生命周期が2年(1+1)、LTSブランチが3.5年(2+1.5)であること、主動保守期間と受動保守期間の定義(受動保守期間は重大以上の脆弱性・不具合のみ修正)について。 ↩ ↩2
-
OpenHarmony Documentation, OpenHarmony Version Definitions. Master/LTS/Release/Beta/タグ版の定義、およびLTS・Releaseブランチの保守スケジュール表(3.0-LTSのみがLTS種別で、1.0.1/3.1/3.2/4.0/4.1がRelease種別であること、4.1-Releaseの保守終了が2026年3月30日であること)について。 ↩ ↩2
-
OpenHarmony Documentation, Release Notes 索引. 3.0-LTS(2021年9月30日)とその系列(3.0.1〜3.0.8 LTS)が掲載され、3.1以降はすべてRelease種別であること、1.x系にもLTS(1.1.0 LTSほか)が存在したがEnd of Lifeとされていること、および6.1 Release(2026年3月8日)・6.0.0.1・6.0.0.2がREADMEの「Latest Versions」一覧より新しいバージョンとして掲載されていることについて。 ↩ ↩2 ↩3
-
Huawei, HarmonyOS 2 - Huawei Global. Huaweiのグローバル消費者向けサイトのHarmonyOS紹介ページが、2026年7月時点でHarmonyOS 2のページであることについて。 ↩ ↩2
-
華為, HarmonyOS 6 - 华为官网. HarmonyOS 6の製品ページが中国向けサイトに用意されていることについて。 ↩ ↩2
-
Huawei Central, Global Huawei Watch 5 claims HarmonyOS 6 software upgrade ほか同メディアのグローバル版ウェアラブル向け配信報道(二次情報). Huaweiが中国国外のスマートウォッチ(Watch 5、Watch GT 4、Watch Fit 3など)にもHarmonyOS 5系・6系のファームウェア更新を配信していることについて。「HarmonyOS 5以降=中国国内限定」とは言えない根拠として参照している。 ↩ ↩2
-
Eclipse Foundation, Eclipse Oniro for OpenHarmony. Eclipse Oniro for OpenHarmonyがOpenAtom FoundationのOpenHarmonyの基盤層の上に構築されること、欧州・グローバル市場向けにReact Nativeサポート・Eclipse TheiaベースのIDE・Servoウェブエンジンなどを追加する方針、ライセンスがApache 2.0とMITであること、プロジェクト状態がIncubatingであることについて。 ↩ ↩2 ↩3
-
OpenHarmony Documentation, OpenHarmony Development Boards List. コミュニティが対応する開発ボードが22機種であること、標準システム向けのRK3568/i.MX8M Mini/A311D/RK3399等、小型システム向けのHi3516DV300/STM32MP157A、軽量システム向けのHi3861/STM32F407/ESP32/RISC-V HPM6750等の一覧と、MILOS_Standard0の想定用途に産業制御・医療機器が含まれることについて。 ↩ ↩2
-
Wikipedia, HarmonyOS version history(二次情報). HarmonyOS 1.0が2019年8月にHonor Vision(スマートスクリーン)向けとして公開された世代で、スマートフォン向けOSとして流通した世代ではないことについて。1.0の内部構成(LiteOS・Linux・AOSP互換レイヤーの有無)は資料によって記述が分かれるため、本文では搭載製品の違いのみを述べている。 ↩
-
South China Morning Post, Huawei to open-source self-developed programming language Cangjie to rival Java and Swift(二次情報). Huaweiが自社開発した言語Cangjie(仓颉)がHarmonyOS NEXT向けアプリ開発に対応し、全HarmonyOS開発者に提供されたこと、2025年にオープンソース化されたことについて。 ↩
-
OpenHarmony Documentation, OpenHarmony 6.0 Release. 6.0 ReleaseでのArkUIのレイアウト機能拡張(LayoutPolicy、セーフエリア関連)、ArkWebのChromiumカーネルの114から132への更新、AppServiceExtensionAbilityの追加、キオスクモード対応などの内容について。 ↩
-
OpenHarmony Documentation, README. OpenHarmony 6.0 Release(API Level 20)、5.1.0 Release(18)、5.0.3(15)、5.0.2(14)、5.0.1(13)、5.0.0 Release(12)が最新版として、4.1 Release(11)以前が「Historical Versions No Longer Maintained」として掲載されていることについて。 ↩
-
HUAWEI Developers, HarmonyOS Versions. HarmonyOSの各バージョンとAPIレベルに対応するリリースノートがHuaweiの開発者ドキュメントとして公開されていることについて。 ↩
-
OpenHarmony, device_qemu README. QEMUによるエミュレーション対象として、Arm Virt(LiteOS-A)、Arm Virt(Linux)、Cortex-M4(mps2-an386)、Cortex-M55(mps3-an547)、RISC-V(riscv32_virt)、Xtensa(esp32)、C-SKY(SmartL_E802)の手順が用意されていることについて。 ↩
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よくある質問
この記事のテーマについて、相談時によくある質問をまとめています。
- OpenHarmonyとHarmonyOSは同じものですか?
- 同じものではありません。OpenHarmonyはOpenAtom財団(開放原子開源基金会)が育成・運営するオープンソースOSプロジェクトで、ソースコードは誰でも取得でき、Apache License 2.0などのオープンソースライセンスで配布されています。一方HarmonyOSはHuaweiの商用OS製品で、OpenHarmonyを土台にしつつ、その上にHuawei独自のフレームワーク、アプリ配信基盤(AppGallery)、クラウドサービス(HMS)を載せたものです。「OpenHarmonyが公開されているからHarmonyOSのソースが全部読める」わけではなく、「OpenHarmonyを載せた装置にAppGalleryのアプリが入る」わけでもありません。Linuxカーネルと商用Linuxディストリビューションの関係に近い、と考えると理解しやすいです。
- HarmonyOS NEXTとは何ですか。HarmonyOS 5や6との関係は?
- HarmonyOS NEXTは、Android(AOSP)由来のコードを取り除いた世代のHarmonyOSに付けられた呼び名で、製品バージョンとしてはHarmonyOS 5に相当します。スマートフォンに展開されたHarmonyOS 2〜4.x世代はAOSPとOpenHarmonyを組み合わせた構成で、Androidアプリ(APK)も動作しました(その前のHarmonyOS 1.0は2019年にスマートスクリーン向けとして登場した世代です)。NEXT以降はAOSP互換レイヤーがなくなり、動くのはHarmonyOSネイティブアプリだけになります。ここで言うネイティブアプリはArkTSに限らず、C/C++のNative API(NDK)やHuawei独自言語のCangjie(仓颉)も選択肢に含まれます。続くHarmonyOS 6ではNEXTという呼称自体が使われなくなり、単にHarmonyOS 6と呼ばれています。2026年6月のHDC 2026ではHarmonyOS 7の開発者ベータが発表されました。
- OpenHarmonyで作った装置にHarmonyOSのアプリをインストールできますか?
- できると考えないでください。OpenHarmonyとHarmonyOSはArkTS・ArkUIという共通の系譜を持ち、APIレベルの番号も近い値が振られていますが、HarmonyOSアプリはHuaweiのHarmonyOS SDKとAppGalleryを前提に作られており、OpenHarmony単体の環境にはそれらがありません。逆にOpenHarmony向けに作ったアプリがHarmonyOS実機でそのまま動くことも保証されません。装置にOpenHarmonyを採用する場合、アプリは自社(または採用したディストリビューションのベンダー)がOpenHarmonyのAPIに対して作る前提で計画してください。
- OpenHarmonyのサポート期間はどれくらいですか?
- コミュニティの生命周期ポリシーでは、Releaseブランチが2年(主動保守1年+受動保守1年)、LTSブランチが3.5年(2年+1.5年)と定義されています。ただしLTSブランチは2021年9月の3.0-LTSが最後で(それ以前には1.1.0 LTSがあります)、3.1以降に公開されたブランチはすべてReleaseです。産業機器のように10年動かす前提の製品でこのOSを使う場合、コミュニティの保守期間だけでは足りず、商用ディストリビューションのベンダー保守を買うか、自社で分岐を保守する体制が必要になります。
- 日本の開発者がOpenHarmonyを触るにはどうすればいいですか?
- ソースコードはgitcode.com / gitee.com / GitHubのミラーからrepoツールで取得でき、アカウント登録や輸出許可のような特別な手続きは不要です。公式ドキュメントは中国語と英語の2種類が用意されており、日本語版はありません。実機ボードを買う前にQEMU上で動かして構造を確認することもできます。まずは英語ドキュメントの「Device Development」の入口から、対象にしたいシステムタイプ(軽量/小型/標準)を決めるところから始めるのが現実的です。
著者プロフィール
記事の著者プロフィールページです。
小村 豪
合同会社小村ソフト 代表
Windows ソフト開発、技術相談、不具合調査を中心に、既存資産が残る案件や原因が見えにくい障害調査に強みがあります。
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