Windows LAPS実務ガイド ── 全PC共通のローカル管理者パスワードをやめる

· 更新日: · · Windows, セキュリティ, LAPS, パスワード管理, Active Directory, Intune, PowerShell, 情報システム

更新履歴(5件・最終更新 2026年09月07日)

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記事の主張と条件・例外を保ち、保存先と管理対象の選定、AD・Entra ID別の導入、保守後のローテーション、旧LAPSからの移行、監査の順に整理しました。閲覧と復号、期限変更の指示と端末での変更完了、パスワード参照と認証後処理の違いを見つけやすくしました。FAQ・コードの実行文・図・参考資料は維持しています。
知識マップの関係を総点検し、説明文と食い違っていた関係(向きの逆転・過剰な一般化・述語の取り違え)を修正しました。本文の説明は変えていません。
知識マップの関係を総点検し、説明文と食い違っていた関係(向きの逆転・過剰な一般化・述語の取り違え)を修正しました。本文の説明は変えていません。
知識マップの関係を総点検し、説明文と食い違っていた関係(向きの逆転・過剰な一般化・述語の取り違え)を修正しました。本文の説明は変えていません。
知識マップの「Windows LAPSはADスキーマ拡張を必要とする」という関係を、「ADへのパスワード保存構成がスキーマ拡張を必要とする」に改めました。Entra ID保存のみの構成では不要なためです。本文の説明は変えていません。
初版公開
この記事を引用する(DOI: 10.5281/zenodo.22054215)

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小村 豪(2026)「Windows LAPS実務ガイド ── 全PC共通のローカル管理者パスワードをやめる」合同会社小村ソフト. https://doi.org/10.5281/zenodo.22054215 https://comcomponent.com/blog/windows-laps-guide/

DOI(最新版)
10.5281/zenodo.22054215
DOI(この版)
10.5281/zenodo.22637345

全PCで同じローカル管理者パスワードを使っていると、1台から漏れた認証情報が、ほかの端末へ侵入するための「合鍵」になります。保守の手順は簡単でも、侵害を横へ広げる経路が残る構成です。

この共通パスワードを、端末ごとに異なるパスワードへ変え、定期的な変更とディレクトリへの保存を自動化するのが、OS標準機能の Windows LAPS(Local Administrator Password Solution) です。ただし、OSに入っているだけでは動きません。保存先、管理対象アカウント、権限、保守後の後始末を決めてからポリシーを適用します。12

この記事は、中小企業の情シス担当者と、PCキッティング・保守運用を請け負う開発者を対象に、2026年8月時点の一次情報にもとづいて説明します。BitLocker・WSUS廃止・ファイアウォール・証明書ストアに続く、情シス向けセキュリティ連載の一つです。

1. まず決めること ── 保存先・アカウント・権限・後始末

導入時に決めることと、導入後に確認することを分けると、作業の順番が見えてきます。

決めること・確認すること 判断の要点 読む場所
パスワードをどこへ保存するか 端末の参加状態に合わせ、ADかEntra IDのどちらか一方を選ぶ。ワークグループ端末では使えない 3章
どのアカウントを管理するか ビルトインAdministratorかカスタム保守アカウントかを選び、使うときに有効な状態かも確認する 4章
誰がパスワードを扱うか ADでは自己更新・閲覧・復号・期限変更の権限を分けて設計する。Entra IDではロールとGraph権限を確認する 5・6章
保守作業の後に何をするか 自動リセットの起点は「参照」ではなく「認証」。取得しただけでも、作業後の明示的なローテーションを手順に入れる 7章
旧LAPSからどう切り替えるか 同じアカウントを新旧両方で管理させない。旧管理を外してから新管理を有効にする 8章
動いたことをどう確かめるか 端末の処理・保存結果と、管理者によるパスワード閲覧の監査を分けて確認する 9章

仕組みを知りたい場合は2章から、導入を進める場合は3・4章で方針を決めてから、AD + GPOなら5章、Entra ID + Intuneなら6章へ進んでください。旧LAPSを運用中なら、新しいポリシーを配る前に8章の移行順序も確認します。

最初に押さえたいのは、Windows LAPSの既定値は無効だという点です。BackupDirectory で保存先を指定して初めて動きます。また、「パスワードが保存されたこと」と「そのアカウントで復旧作業ができること」は別の確認事項です。2

図の実線は常に成り立つ関係、破線は条件付きの関係です(成立条件は詳細ページの各関係の説明に記載)。関係すべての一覧(全31件、根拠・確度つき)と主要概念の定義は知識マップ詳細ページにまとめています。データ: JSON-LD / Turtle

2. Windows LAPSは、どのリスクを減らすのか

2.1. 共通パスワードは、共通のNTハッシュになる

管理対象になるのは、ビルトインAdministratorや、キッティング時に作る保守用アカウントなどのローカル管理者アカウントです。

Windowsは、ローカルアカウントのパスワードから計算したNTハッシュを保持しています。NTLM認証では、このハッシュが認証の材料になります。したがって、パスワードが全台で同じなら、ハッシュも全台で同じです。

攻撃者が1台の管理者権限を奪い、メモリやローカルデータベース(SAM)からハッシュを取り出すと、それを平文パスワードへ戻さずに認証へ使えます。これがPass-the-Hash攻撃です。共通パスワード環境では、1台から得たハッシュがほかの端末でも使えるため、侵害が横へ広がります。認証の仕組みは「図解でわかるNTLMとKerberos」で詳しく説明しています。13

LAPS導入後パスワードが端末ごとに違うのでPC-01のハッシュを取得PC-01を侵害他のPCではこのハッシュで認証できない(ローカル管理者経由の横展開を遮断)共通パスワード環境Pass-the-HashPass-the-HashPass-the-Hash管理者のNTハッシュを取得PC-01を侵害(マルウェア・標的型攻撃)PC-02PC-03…全台に横展開

図1: 端末ごとにパスワードを変えると、1台から得たローカル管理者のハッシュをほかの端末へ使い回す経路を断てる。

2.2. 個別化と定期変更を、手作業にしない

対策は、ローカル管理者パスワードを端末ごとに変え、定期的にも変更することです。ただし、数十台分を個別に生成して台帳へ記録し、更新し続ける運用は負担になります。共通パスワードが使われてきた背景には、この管理コストがあります。

Windows LAPSは、個別化・自動ローテーション・ディレクトリへの保存をまとめて引き受けます。Microsoftも、Pass-the-Hashと横展開(lateral-traversal)への対策を利点の筆頭に挙げています。1

LAPSで断つのは、ローカル管理者アカウントの使い回しによる横展開経路です。侵害されたPCからドメイン資格情報を盗まれるなど、ほかの横展開経路まで塞がるわけではありません。日常業務を管理者アカウントで行わず、保守用アカウントの用途を絞ることも必要です。「Windowsの管理者特権が必要になるのはいつなのか」も参照してください。

2.3. 旧LAPSとWindows LAPSは、別の実装

旧LAPS(レガシーMicrosoft LAPS)は、Microsoftが2016年に公開した追加インストール型のツールです。MSIでグループポリシー拡張(CSE)を各端末へ入れ、ADの ms-Mcs-AdmPwd 属性へパスワードを平文で保存し、ACLで保護します。1

Windows LAPSは、その後継としてOSに組み込まれた別実装です。2023年4月11日の更新プログラム以降のWindows 10、Windows 11 21H2/22H2、Windows Server 2019/2022に含まれ、Windows 11 23H2以降とWindows Server 2025以降には最初から入っています。該当するOSと更新プログラムの構成なら、追加インストールは不要です。1

観点 旧LAPS(レガシー) Windows LAPS
提供形態 MSIを全端末に配布してインストール OS組み込み(2023年4月更新以降)。追加インストール不要1
パスワード保存先 Active Directoryのみ Active DirectoryまたはMicrosoft Entra ID1
ADでの暗号化 非対応(平文+ACL保護) 対応(DFL 2016以上で暗号化保存・履歴保存が可能)4
DSRMパスワード管理 非対応 ドメインコントローラーのDSRMアカウントも管理可能1
認証後の自動リセット なし PostAuthenticationActionsで認証後の自動リセット+サインアウト等2
PowerShell AdmPwd.PSモジュール LAPSモジュール(Get-LapsADPassword等)5
今後 Windows 11 23H2以降で非推奨。新OSではMSIインストール自体がブロック1 現行の標準

Windows LAPSは旧LAPSの単なる改修版ではなく、ADのスキーマ属性も msLAPS-* という別のものを使います。旧LAPSを導入済みでも、Windows LAPS用のスキーマ拡張は改めて必要です。5

旧GPOをWindows LAPSが解釈する「エミュレーションモード」もありますが、移行のための仕組みで、新規導入で選ぶ理由はありません。制約と切替手順は8章で説明します。

3. 端末の参加状態から、保存先を選ぶ

3.1. 保存先はADかEntra IDのどちらか一方

Windows LAPSが生成したパスワードは、ディレクトリへ「バックアップ」されます。ADとEntra IDの両方へ同時に保存することはできません。1

環境 保存先 ポリシー配布 パスワードの確認手段 判断
ADドメイン参加のみ Active Directory(コンピューターオブジェクトのmsLAPS-*属性) グループポリシー(LAPS.admx) Get-LapsADPassword、ADユーザーとコンピューターのプロパティ画面4 オンプレ中心の中小企業の本命。スキーマ拡張と権限設定が事前に必要
Entra参加のみ(+Intune) Microsoft Entra ID IntuneからLAPS CSPで配布 Entra管理センター/Intune管理センター、Get-LapsAADPassword(Microsoft Graph)6 クラウド管理に移行済みならこちら。テナント側での機能有効化が必要
ハイブリッド参加 ADまたはEntra IDのどちらか一方を選択1 GPOまたはIntune 選んだ保存先に応じて上のいずれか ヘルプデスクが普段どちらを見て仕事をしているかで決める
ワークグループ(非参加) 保存先がなく利用不可1 端末ごとに個別パスワード+台帳の手動運用が代替。台数が増えるならEntra参加/ドメイン参加への移行を検討

ワークグループ端末では、保存先になるディレクトリがないためWindows LAPSを使えません。運用を続けるなら、キッティング時に端末ごとに異なるパスワードを設定し、パスワードマネージャーなどで安全に台帳管理します。キッティングをスクリプト化している場合は、端末別パスワードの生成も組み込みます。「winget + PowerShellでPCキッティングを自動化する」も参照してください。

3.2. AD保存では、パスワード属性と期限の属性を区別する

AD保存の場合は、コンピューターオブジェクトの属性へ書き込みます。パスワード本体と、その期限は、機密性の扱いが異なります。7

属性 保存されるもの 機密属性か
msLAPS-Password 平文のパスワードと付随情報 機密属性。通常の読み取り権限だけでは参照できない
msLAPS-EncryptedPassword などの msLAPS-Encrypted* 暗号化されたパスワードなど 機密属性。属性の閲覧と中身の復号は別の権限
msLAPS-PasswordExpirationTime パスワードの期限 機密属性ではない(SearchFlags: 0)。既定の読み取り権限で参照できるメタデータ

暗号化保存とパスワード履歴には、ドメイン機能レベル(DFL)2016以上が必要です。一方、暗号化設定 ADPasswordEncryptionEnabled の既定値は有効です。DFLが2016より古いドメインでは、自動的に平文へ切り替わることを当てにせず、暗号化をポリシーで明示的に無効化し、平文 + ACL保護の構成にします。42

3.3. LAPS自体のライセンスと、管理サービスのライセンスは分ける

Windows LAPSの機能自体は無料です。AD保存に追加ライセンス要件はなく、Entra ID保存もMicrosoft Entra ID Free以上で利用できます。1

ただし、Intuneでポリシーを配布する場合のIntuneライセンスなど、周辺機能の要件は別に確認します。Entra ID保存では、テナント側の機能有効化も必要です。実際の手順は6章にまとめます。

4. 管理対象アカウントと、適用するポリシーを決める

4.1. 「パスワードを管理する」と「アカウントを使えるようにする」は別

AdministratorAccountName を指定しなければ、Windows LAPSはビルトインAdministratorを既知のRIDで特定します。カスタム保守アカウントを管理するときだけ、名前を指定します。この設定でカスタムアカウントが作られるわけではないため、アカウント自体は別途用意します。2

もう一つ必要なのが、有効・無効の確認です。ビルトインAdministratorはWindowsセットアップで無効化されます。Windows LAPSは無効なアカウントのパスワードも管理しますが、この通常の構成ではアカウントを有効化しません。32

そのため、「パスワードは保存されているが、復旧時にサインインできない」状態が起こり得ます。復旧用に使うなら、次のいずれかを明示的に選びます。

管理対象の選び方 用意・確認すること
ビルトインAdministratorを使う 利用できるよう有効化して運用することを決める
カスタム保守アカウントを使う アカウントを作成・有効化し、管理対象名を指定する
自動アカウント管理を使う Windows 11 24H2 / Server 2025以降で、AutomaticAccountManagement 系設定により有効状態も管理する

4.2. 保存先を指定して初めて動き出す

Windows LAPSの BackupDirectory は既定で無効(0)です。ADへ保存するなら2、Entra IDへ保存するなら1を指定します。ここを設定しなければ、パスワードのバックアップは始まりません。2

主要な設定を以下にまとめます。AdministratorAccountName の説明は、自動アカウント管理を使わない通常の構成です。この表の PasswordExpirationProtectionEnabledADPasswordEncryptionEnabled はAD保存向けの設定で、Entra ID保存には適用されません。

設定 既定値 実務での考え方
BackupDirectory 無効(0) 必須。AD=2、Entra ID=12
AdministratorAccountName 未指定(ビルトインAdministratorを管理) 未指定ならビルトインアカウントをRIDで自動特定。カスタム保守アカウントを管理する場合のみ名前を指定。アカウント自体は作成されないので別途作る2
PasswordAgeDays 30日 ローテーション周期。1〜365日(Entra保存時は最短7日)2
PasswordLength / PasswordComplexity 14文字 / 大小英数記号(4) 既定のままで実用十分。複雑性1〜3は旧LAPS互換用で非推奨2
PasswordExpirationProtectionEnabled 有効 ポリシー上限を超えた期限延長を防ぐ2
ADPasswordEncryptionEnabled 有効(要DFL 2016以上) 暗号化保存。復号できる相手は既定でDomain Adminsのみ(5.2節)2
PostAuthenticationResetDelay / PostAuthenticationActions 24時間 / リセット+サインアウト(3) 認証後の自動使い捨て(7.3節)2

この章では設定方針を決め、実際のポリシー配布は保存先の準備が済んでから行います。ADなら次章、Entra IDなら6章へ進みます。

5. AD + GPO構成で導入する

5.1. フォレストのスキーマと、対象OUの権限を準備する

AD保存では、ポリシーを配る前にスキーマと権限を準備します。スキーマ拡張はフォレストで1回、自己更新・閲覧・期限変更の権限は対象OUと担当グループに合わせて設定します。4

以下のOU、ドメイン名、グループ名、後続のPC名は例です。自分の環境の対象へ置き換えて実行してください。

# 1. スキーマ拡張(フォレストで1回だけ。Schema Admins権限で実行)
Update-LapsADSchema

# 2. 対象OU配下のコンピューターに、自分のパスワード属性を更新する権限を付与
Set-LapsADComputerSelfPermission -Identity "OU=社内PC,DC=example,DC=co,DC=jp"

# 3. パスワードを閲覧できるグループを付与(Domain Adminsは既定で閲覧可能)
Set-LapsADReadPasswordPermission -Identity "OU=社内PC,DC=example,DC=co,DC=jp" `
    -AllowedPrincipals @("EXAMPLE\HelpdeskAdmins")

# 4. パスワード期限を操作(即時失効=リセット指示)できるグループを付与
#    (7.1節の Set-LapsADPasswordExpirationTime に必要。Domain Adminsは既定で可能)
Set-LapsADResetPasswordPermission -Identity "OU=社内PC,DC=example,DC=co,DC=jp" `
    -AllowedPrincipals @("EXAMPLE\HelpdeskAdmins")

# 5. 想定外の閲覧権限保持者がいないか確認(5.2節で詳述)
Find-LapsADExtendedRights -Identity "OU=社内PC,DC=example,DC=co,DC=jp"

Update-LapsADSchema は、旧LAPSの Update-AdmPwdADSchema とは別のコマンドレットです。追加される属性も異なるため、旧LAPS用の準備だけでは足りません。5

5.2. 閲覧・復号・期限変更を、それぞれ許可する

暗号化保存を使う場合、閲覧権限を与えただけではパスワードを復号できません。復号できるのは既定でDomain Adminsだけです。ヘルプデスクへ取得を委任するなら、ポリシーの ADPasswordEncryptionPrincipal にも対象グループ(上の例なら EXAMPLE\HelpdeskAdmins)を指定します。42

必要な操作 権限・設定 忘れると起きること
端末が自分の属性を更新する Set-LapsADComputerSelfPermission 端末がパスワードを保存できない
管理者がパスワード属性を読む Set-LapsADReadPasswordPermission 取得を担当する管理者が属性を読めない
暗号化された中身を復号する ADPasswordEncryptionPrincipal 属性を読めても平文のパスワードを取得できない
管理者が期限を操作する Set-LapsADResetPasswordPermission Set-LapsADPasswordExpirationTime で期限切れを指示できない

ここで、許可したグループだけを見て終わらないでください。対象OUにAll Extended Rights(拡張権利)を持つプリンシパルも、機密属性を読み取れます。過去の広い権限委任が残っていると、想定外のグループまで読める状態になります。Find-LapsADExtendedRights で保持者を洗い出し、SYSTEMとDomain Admins以外が出たら委任内容を見直します。4

暗号化保存なら、属性の閲覧と復号を分離できます。「ヘルプデスクは担当OUのパスワードだけを復号できる」という設計は、この二段構えで行います。

5.3. 管理用テンプレートを用意し、GPOを配布する

GPOの設定場所は、「コンピューターの構成 > ポリシー > 管理用テンプレート > システム > LAPS」です。4章で決めた管理対象とパスワード設定に加え、BackupDirectory = 2 を指定します。DFLと暗号化の組合せは3.2節、復号するグループは5.2節のとおりです。24

GPOの中央ストア(Central Store)を使っている場合は、テンプレートのコピーも必要です。Windows Updateは、Windows LAPSのテンプレートを中央ストアへ自動コピーしません。2

%windir%\PolicyDefinitions\LAPS.admx と、対応言語の LAPS.adml をセットでコピーします。日本語UIなら ja-JP サブフォルダーのADMLを、中央ストアの対応する言語フォルダーへ置きます。ADMXだけでは、GPMCでリソースエラーになるため注意してください。

5.4. 対象端末で保存を確認し、管理端末から取得する

Windows LAPSは、有効なポリシーを1時間ごとに処理します。適用を待たずに確認するなら、対象端末上で即時処理を実行し、イベントログを確認します。4

# 端末側: ポリシーを即時処理(検証時の定番)
Invoke-LapsPolicyProcessing

# 端末側: イベントログで結果を確認
# 10003=処理開始 / 10004=成功 / 10005=失敗 / 10018=ADへの保存成功
Get-WinEvent -LogName "Microsoft-Windows-LAPS/Operational" -MaxEvents 20

保存されたパスワードは、閲覧・復号の権限を持つ管理端末側の利用者が取得します。4

# ADからパスワードを取得(-AsPlainTextなしなら文字列を伏せたまま扱える)
Get-LapsADPassword -Identity PC-0123 -AsPlainText

# 出力例: Account, Password, PasswordUpdateTime, ExpirationTimestamp,
#         Source(EncryptedPasswordなら暗号化保存), AuthorizedDecryptor などが返る

-AsPlainText を付けない場合は、文字列を伏せたまま扱えます。GUIでは「Active Directory ユーザーとコンピューター」のコンピューターのプロパティにあるLAPSタブから参照できます。1

保存・取得を確認したら、4.1節で決めたアカウントが復旧用途で使えるかも確認します。取得後のローテーションは7章、ログの読み分けは9章へ進みます。

6. Entra ID + Intune構成で導入する

Entra ID保存では、AD用のスキーマ拡張やOUのACL設定は不要です。代わりに、テナント側の有効化と、Entra ID側の閲覧権限を確認します。6

手順 実施すること
1. テナントの準備 Microsoft Entraテナントの「デバイス設定」で、ローカル管理者パスワード管理を有効にする
2. ポリシー配布 IntuneからLAPS CSP経由で配布し、BackupDirectory = 1 と管理対象アカウント・パスワードの設定を適用する
3. 保存結果の確認 対象端末のイベントログで、Entra IDへの保存成功 10029 を確認する
4. パスワード取得 Entra管理センター/Intune管理センター、またはMicrosoft Graph経由の Get-LapsAADPassword を使う

テナント側で機能を有効にしていないと、端末はパスワードを保存できません。また、ADの保存成功は10018ですが、Entra IDは10029です。保存先に合ったイベントを確認します。68

Entra IDでは、既定でグローバル管理者などの特権ロールがパスワードを閲覧できます。Microsoft Graphから取得する場合も、必要な権限を持つ接続で実行します。次は委任アクセスでスコープを明示する例です。6

# Entra ID保存のパスワードをGraph経由で取得(委任アクセスの例)
# 接続時に必要なスコープを明示的に要求する
Connect-MgGraph -Scopes "Device.Read.All","DeviceLocalCredential.Read.All"
Get-LapsAADPassword -DeviceIds PC-0123 -IncludePasswords -AsPlainText

管理対象アカウントの有効状態は、Entra ID保存でも4.1節と同じ確認が必要です。保守後のローテーションには、AD専用の期限変更コマンドレットではなく、7.2節で説明する端末側の操作またはIntuneの操作を使います。

7. 保守作業の後に、パスワードをローテーションする

7.1. 期限切れの指示と、端末での変更完了を区別する

保守作業でパスワードを取得したあとや、侵害の疑いがあるときは、次の定期ローテーションまで待たずに変更します。コマンドごとに、実行場所と、そこで完了することを分けてください。45

操作 実行する場所 行うこと
Set-LapsADPasswordExpirationTime ADの期限変更権限を持つ管理端末側 AD上の期限を「今」にし、次回の端末処理でローテーションさせる。AD保存専用
Invoke-LapsPolicyProcessing 管理対象端末上 LAPSポリシーを直ちに処理する。上の期限切れ指示と組み合わせれば、定期処理を待たずに変更できる
Reset-LapsPassword 管理対象端末上 その端末の管理対象パスワードを直接、即時ローテーションする

AD保存では、次のように使い分けます。前半の2つのコマンドは、実行場所が異なります。

# 管理端末から: 期限を「今」にして、次回処理でローテーションさせる
Set-LapsADPasswordExpirationTime -Identity PC-0123
# 対象端末で即時処理を蹴れば、その場で新パスワードに変わる
Invoke-LapsPolicyProcessing

# 対象端末上で直接、即時ローテーションする場合
Reset-LapsPassword

期限を変えるコマンドが成功したことと、対象端末のパスワードが新しくなったことは同じではありません。対象端末の処理結果と保存成功のログまで確認します。

7.2. Entra ID保存では、対象端末かIntuneから変更する

Set-LapsADPasswordExpirationTime はAD保存専用です。Entra ID保存の端末では、対象端末上で Reset-LapsPassword を実行するか、Intuneのローカル管理者パスワードのローテーション操作を使います。保存先が違えば、管理側からの操作も違うと考えてください。65

7.3. 自動リセットは「認証後」であり、「参照後」ではない

Windows LAPSには、管理対象アカウントでの認証を検知してから、猶予時間の経過後に後始末する PostAuthenticationActions があります。既定では24時間後に「パスワードのリセット + サインアウト」を実行します。2

PostAuthenticationActions 動作
1 パスワードをリセット
3(既定) リセット+対話セッションのサインアウト(SMBセッションも切断)2
5 リセット+端末を再起動2
11 リセット+サインアウト+残存プロセスの終了(Windows 11 24H2 / Server 2025以降)2

「使った瞬間に無効になる」機能ではありません。猶予時間中は、同じパスワードが有効です。さらに、次の2点を区別してください。

設定・操作 自動処理の扱い
PostAuthenticationResetDelay を0にする 即時実行ではなく、認証後の処理自体が無効になる
ディレクトリからパスワードを参照しただけで、認証には使わない 認証後処理の起点にならず、この自動リセットは動かない

パスワードをメモやチャットに残したままにしないためにも、取得したら、使用の有無にかかわらず作業完了時に明示的なローテーションを行うことを手順に固定します。ADなら7.1節、Entra IDなら7.2節の方法を使い、結果まで確認してください。

8. 旧LAPSからは、二重管理を作らずに移行する

8.1. Windows LAPSの優先と、旧CSEの停止は別

同じアカウントを旧LAPSとWindows LAPSの両方で管理する構成は、サポートされません。2つの仕組みが同じパスワードを変更し合うため、セキュリティリスクになります。9

混同しやすいのは、次の2つです。

Windows LAPS側の動作 それだけでは止まらないもの
Windows LAPSのポリシーが1つでも適用されていれば、Windows LAPS自身は旧LAPSのポリシーを無視する インストール済みの旧CSEは、旧GPOを独立して処理し続ける

つまり、「Windows LAPSが優先されるから、旧CSEが残っていても大丈夫」ではありません。旧GPOの適用対象に残したまま新しいポリシーを有効にすると、両方が同じアカウントをローテーションする状態になります。9

8.2. エミュレーションモードが動く条件を確認する

旧LAPSのGPOをWindows LAPSに処理させるエミュレーションモードは、旧CSEがインストールされていない端末でのみ動きます。旧スキーマ・旧ACLなど、旧LAPS環境の前提をそのまま使いますが、暗号化やEntra ID保存などの新機能は使えません。9

OSを更新しただけでも、旧GPOが残っている端末が意図せずエミュレーションモードで動き始めることがあります。キッティング直後の想定外のパスワード変更を避けたい場合は、ローカル構成キーで BackupDirectory = 0 を設定して抑止できます。9

8.3. 旧管理を外してから、新管理を有効にする

移行は次の順番で進めます。

  1. 対象OUを旧LAPSのGPO適用から外すか、旧CSEをアンインストールし、旧管理を外す。
  2. Windows LAPSのポリシーを適用する。
  3. 旧GPO・旧CSEの残りを撤去する。

端末単位で、どちらの仕組みが管理しているかを一意にするのが要点です。逆順にすると、旧CSEが残る端末で二重管理を作ってしまいます。

9. 動作確認のログと、パスワード閲覧の監査を分ける

9.1. 端末では、処理・保存先・適用ポリシーを確認する

Windows LAPSの動作は、イベントビューアーの 「アプリケーションとサービス ログ > Microsoft > Windows > LAPS > Operational」 に記録されます。8

イベントID 確認すること
10003 ポリシー処理の開始
10004 / 10005 ポリシー処理の成功 / 失敗
10018 / 10029 パスワード保存の成功。ADは10018、Entra IDは10029
10021 / 10022 / 10023 適用中ポリシーの内容。AD保存 / Entra ID保存 / 旧LAPSエミュレーション

5.4節の Get-WinEvent で取得できます。「動かない」「取得できない」ときは、ポリシーが有効か、保存先の準備が済んでいるか、保存に成功しているか、取得側に閲覧・復号権限があるかを分けて確認します。

9.2. ディレクトリ側では「誰が、いつ見たか」を残す

端末が正常にローテーションした記録だけでは、管理者がパスワードを閲覧した履歴の代わりになりません。集中保存するパスワードの閲覧は、別に監査します。

AD保存では、Set-LapsADAuditing で対象OUの監査設定を構成し、パスワード属性へのアクセスをドメインコントローラーのセキュリティログに記録します。Entra ID保存では、Entra側の監査ログ・レポート機能で追跡します。51

10. まとめ ── 保存できたところで、導入を終えない

Windows LAPSは、全PC共通のローカル管理者パスワードを、端末ごとの個別管理と自動ローテーションへ変える仕組みです。対応するWindowsに組み込まれているため追加インストールは不要ですが、保存先を指定するポリシーがなければ動きません。新規導入はWindows LAPSを選び、旧LAPSは移行を計画します。12

導入と保守の確認は、次のところまで含めます。

確認する段階 完了の目安
保存先 端末の参加状態に合ったADまたはEntra IDを選び、必要な準備とポリシーを設定した
管理対象 管理するアカウントが存在し、復旧時に使うための有効状態を決めた
権限 想定外の閲覧者を確認し、担当者に必要な閲覧・復号・期限変更の権限を設定した
日常運用 取得後は使用の有無にかかわらずローテーションし、端末での処理・保存結果まで確認する手順がある
移行・監査 旧LAPSとの二重管理がなく、端末の動作とパスワード閲覧をそれぞれ追跡できる

ワークグループ端末はLAPSの対象外なので、手動での端末別パスワード管理か、Entra ID参加・ドメイン参加への見直しが必要です。また、LAPSで対処するのはローカル管理者パスワードの使い回しであり、ほかの資格情報の窃取まで防げるわけではありません。

「保存できる」「必要な担当者が取得できる」「復旧に使える」「作業後に変更できる」までを、一つの運用として確認することが大切です。

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関連する相談領域

合同会社小村ソフトでは、PCキッティングの自動化スクリプト作成、Windows LAPS導入を含む端末セキュリティ設定の整備、既存の共通パスワード運用からの移行計画づくりを扱っています。「キッティング手順書はあるが属人化している」「LAPSを入れたいがADの権限設定に自信がない」といった段階からで構いません。

参考リンク

  1. Microsoft Learn, What is Windows LAPS?. Windows LAPSがEntra参加またはAD参加デバイスのローカル管理者アカウントパスワードを自動管理・バックアップするWindowsの機能であること、対応OS(2023年4月11日更新以降のWindows 10・Windows 11 21H2/22H2・Windows Server 2019/2022、およびWindows 11 23H2以降・Windows Server 2025以降は標準搭載)、利点の筆頭がPass-the-Hash攻撃と横展開攻撃からの保護であること、参加状態による保存先の制約(Entra参加のみ→Entra ID、AD参加のみ→AD、ハイブリッド→どちらか選択、両方への保存は不可)、旧LAPSがWindows 11 23H2以降で非推奨となり新OSではMSIインストールがブロックされること、旧LAPSは2016年に公開された別製品でWindows LAPSは完全に別実装であること、ADユーザーとコンピューターのプロパティ画面・専用イベントログチャネル・PowerShellモジュールによる管理、機能自体は無料でAD保存に追加ライセンス不要、Entra ID保存はEntra ID Free以上で利用可能であることについて。  2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

  2. Microsoft Learn, Configure policy settings for Windows LAPS. GPO(コンピューターの構成>ポリシー>管理用テンプレート>システム>LAPS、テンプレートは%windir%\PolicyDefinitions\LAPS.admx)とLAPS CSPによるポリシー構成、GPO中央ストアへはLAPS.admxを手動コピーする必要があること、各設定の既定値(BackupDirectory=無効、PasswordAgeDays=30日・最短1日・Entra保存時は最短7日、PasswordLength=14、PasswordComplexity=4で1〜3は旧LAPS互換用、PasswordExpirationProtectionEnabled=有効、ADPasswordEncryptionEnabled=有効でDFL2016以上が必要、PostAuthenticationResetDelay=24時間で0にすると無効化、PostAuthenticationActions=3)、AdministratorAccountName未指定時はビルトインアカウントをRIDで自動特定しカスタムアカウントはLAPSが作成しないこと、PostAuthenticationActionsの各値(1=リセット、3=リセット+サインアウト+SMBセッション削除、5=リセット+再起動、11=リセット+サインアウト+プロセス終了はWindows 11 24H2/Server 2025以降)について。  2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

  3. Microsoft Learn, Local accounts. ビルトインAdministratorアカウントがWindowsセットアップで無効化され、代わりにAdministratorsグループに属する別のローカルアカウントが作成されること、無効化されたAdministratorアカウントはセーフモードでの特例を除き使用できないこと、ローカル管理者アカウントのパスワード使い回しがPass-the-Hash攻撃による横展開のリスクになりランダム化の第一の手段としてLAPSが挙げられていることについて。  2

  4. Microsoft Learn, Get started with Windows LAPS and Windows Server Active Directory. Update-LapsADSchemaによるフォレスト1回のスキーマ拡張、Set-LapsADComputerSelfPermissionによるコンピューター自身の更新権限付与、Set-LapsADReadPasswordPermissionによる閲覧権限付与(Domain Adminsは既定で閲覧可能)、Set-LapsADResetPasswordPermissionによる期限設定(即時失効)権限の付与(Domain Adminsは既定で保有)、閲覧権限と復号権限は別でありADPasswordEncryptionPrincipal(既定はDomain Admins)が復号可能者を決めること、Find-LapsADExtendedRightsによる拡張権利保持者の確認(LAPSパスワード属性はすべて機密属性で拡張権利保持者は読み取り可能)、BackupDirectory=2の必須設定、ポリシーが1時間ごとに処理されイベント10018でAD保存成功を確認できること、Invoke-LapsPolicyProcessingによる即時処理、Get-LapsADPasswordによる取得、Set-LapsADPasswordExpirationTimeによる期限切れ設定とReset-LapsPasswordによる端末上での即時ローテーション、暗号化にはDFL2016以上が必要でそれ未満は平文(ACL保護)保存のみであることについて。  2 3 4 5 6 7 8 9 10

  5. Microsoft Learn, Overview of Windows LAPS PowerShell cmdlets. LAPS PowerShellモジュールの各コマンドレット(Get-LapsAADPassword、Get-LapsADPassword、Invoke-LapsPolicyProcessing、Reset-LapsPassword、Set-LapsADAuditing、Set-LapsADComputerSelfPermission、Set-LapsADPasswordExpirationTime、Set-LapsADReadPasswordPermission、Set-LapsADResetPasswordPermission、Update-LapsADSchema、Find-LapsADExtendedRights、Get-LapsDiagnostics)の役割、旧LAPSのAdmPwd.PSモジュールとの対応表、Windows LAPSのコマンドレットが旧LAPSとは完全に別のスキーマ拡張に対して動作することについて。  2 3 4 5 6

  6. Microsoft Learn, Get started with Windows LAPS and Microsoft Entra ID. Entra ID保存ではテナントのデバイス設定で機能を有効化する必要があること、Entra参加デバイスへのポリシー配布はIntune+LAPS CSPが推奨であること、Entra保存時に適用される設定のサブセット、パスワード取得はMicrosoft Graph経由(Get-LapsAADPasswordはGraph PowerShellのラッパー)またはEntra/Intune管理センターの画面で行うこと、必要なGraph権限(Device.Read.AllとDeviceLocalCredential.Read.AllまたはDeviceLocalCredential.ReadBasic.All)、保存成功はイベント10029で確認できることについて。  2 3 4 5

  7. Microsoft Learn, Windows LAPS schema extensions reference. Update-LapsADSchemaがコンピューターオブジェクトに追加するmsLAPS-*属性(msLAPS-Password=平文パスワードと付随情報、msLAPS-PasswordExpirationTime=期限、msLAPS-EncryptedPassword=暗号化パスワード等)の仕様と、パスワード系属性のSearchFlagsが904(fCONFIDENTIAL=機密属性を含む)である一方、msLAPS-PasswordExpirationTimeのSearchFlagsは0で機密マークされていないことについて。 

  8. Microsoft Learn, Use Windows LAPS event logs. 専用イベントログチャネル(イベントビューアーのアプリケーションとサービス ログ>Microsoft>Windows>LAPS>Operational)にすべての動作が記録されること、ポリシー処理の開始10003・成功10004・失敗10005、適用中ポリシー内容の記録(AD保存10021・Entra保存10022・旧LAPSエミュレーション10023)、パスワード保存成功のイベント(AD=10018、Entra ID=10029)について。  2

  9. Microsoft Learn, Get started with Windows LAPS in legacy Microsoft LAPS emulation mode. 旧LAPSのGPO設定をWindows LAPSが解釈して動くエミュレーションモードの制約(平文保存のみ、旧スキーマ拡張・旧GPO定義・旧ACL管理には旧LAPSのインストールが必要、Windows LAPSポリシーが存在する場合は常にそちらが優先され旧ポリシーは無視される、旧LAPSのCSEがインストールされている端末では動作しない)、同一アカウントを2つの仕組みで管理する構成はセキュリティリスクでありサポートされないこと、ローカル構成キーにBackupDirectory=0を設定してエミュレーションモードを抑止できることについて。  2 3 4

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よくある質問

この記事のテーマについて、相談時によくある質問をまとめています。

旧LAPS(MSI配布のMicrosoft LAPS)をすでに運用しています。何かする必要がありますか?
移行の計画を始めてください。旧LAPSはWindows 11 23H2以降で非推奨となり、新しいOSではMSIのインストール自体がブロックされます。現在のOS(2023年4月更新適用済みのWindows 10/11、Windows Server 2019/2022以降)にはWindows LAPSが組み込まれているため、追加インストールなしで移行できます。移行期間中はWindows LAPSの「旧LAPSエミュレーションモード」で旧ポリシーを継続処理させることもできますが、旧LAPSのCSEがインストールされた端末では動作しない、暗号化やEntra ID保存など新機能が使えないなどの制約があります。同じアカウントを新旧両方で管理する構成はサポートされないので、端末単位でどちらが管理しているかを明確にして切り替えてください。
取得したパスワードを使った後、そのまま放置しても大丈夫ですか?
既定の構成なら自動で後始末されますが、即時ではありません。Windows LAPSには、管理対象アカウントでの認証(ログオン)を検知してから猶予時間の経過後に処理を行うPostAuthenticationActionsがあり、既定では認証の24時間後にパスワードのリセットとサインアウトが実行されます。裏を返せば、その猶予時間が過ぎるまで同じパスワードは有効なまま使えるので、「使った瞬間に無効になる」わけではありません。また、この仕組みが動くのは「パスワードで認証したとき」であって「ディレクトリから参照しただけ」では動きません。確実なのは、作業完了時に明示的に失効させる運用です。AD保存ならSet-LapsADPasswordExpirationTimeで期限切れにします(このコマンドレットはAD保存専用です)。Entra ID保存の場合は、対象端末上でReset-LapsPasswordを実行するか、Intuneのローカル管理者パスワードのローテーション操作を使います。
ドメインにもEntra IDにも参加していないワークグループ運用のPCでは使えますか?
使えません。Windows LAPSはパスワードの保存先としてActive DirectoryまたはMicrosoft Entra IDを必要とし、どちらにも参加していない端末にはバックアップ先がないためです。ワークグループ運用を続けるなら、端末ごとに異なるローカル管理者パスワードを設定して安全な場所(パスワードマネージャー等)で台帳管理する、という手動運用が現実的な代替になります。台数が増えてきたら、LAPSを含む集中管理の恩恵を受けるためにEntra ID参加(+Intune)やドメイン参加への移行を検討する時期です。
保存されたパスワードは誰が閲覧できますか?
Active Directory保存の場合、既定で閲覧できるのはDomain Adminsのメンバーで、他のユーザーやグループにはSet-LapsADReadPasswordPermissionで明示的に権限を付与します。ただし、パスワード属性は機密属性(confidential)であるものの、OUに対して拡張権利(All Extended Rights)を持つプリンシパルは読み取れてしまうため、Find-LapsADExtendedRightsで想定外の保持者がいないかを導入時に必ず確認してください。さらにADPasswordEncryptionEnabledで暗号化を有効にすれば(ドメイン機能レベル2016以上が必要)、復号できる相手をADPasswordEncryptionPrincipalで指定したグループに絞れます。Entra ID保存の場合は、既定ではグローバル管理者などの特権ロールが閲覧でき、Microsoft Graphでの取得にはDeviceLocalCredential.Read.All権限が必要です。
Windows LAPSの利用に追加ライセンスは必要ですか?
機能自体は無料です。Windows LAPSはサポートされるWindowsに組み込まれた標準機能で、Active Directoryへのパスワード保存に追加のライセンス要件はありません。Microsoft Entra IDへの保存も、Microsoft Entra ID Free以上のライセンスで利用できます。Intuneでポリシーを配布する場合のIntuneライセンスなど、周辺のEntra/Intune関連機能には別途ライセンス要件があり得るため、そこだけ確認してください。

著者プロフィール

記事の著者プロフィールページです。

小村 豪

合同会社小村ソフト 代表

Windows ソフト開発、技術相談、不具合調査を中心に、既存資産が残る案件や原因が見えにくい障害調査に強みがあります。

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