サイトリニューアル事例:宮崎の運送会社ドーズキャリーサービス ── 旧サイトから何をどう引き継いだか
· 小村 豪 · ホームページ制作, SEO対策, 既存サイト改善, リニューアル, 事例, ローカルSEO
サイトリニューアルで一番怖いのは、見た目が新しくなった代わりに、検索順位や問い合わせ導線が静かに壊れることです。 今回は宮崎の運送会社「ドーズキャリーサービス」様のリニューアル案件を題材に、デザインより先に何を固めたかを整理します。
サイトリニューアルというと、まずデザイン案やトップページの見た目から話が始まることが多いです。 ですが、旧サイトに一定の検索流入や被リンクがある場合、デザインより先に決めておかないと後戻りしにくいことがあります。それが URL 設計と、旧サイトの情報をどう引き継ぐかという部分です。
この記事は、宮崎で単身引越し・長距離配送・冷蔵冷凍配送などを手がける運送会社「ドーズキャリーサービス」様のサイトリニューアルを題材に、実際にどういう手順で進めたかをまとめたものです。簡潔な概要は ドーズキャリーサービスの構成を整理した事例 にありますが、この記事ではその中身をもう少し詳しく掘り下げます。
なお、この記事にはアクセス数や問い合わせ数の変化といった効果測定の数値は出てきません。今回整理できたのは「何を、どういう手順で実施したか」という事実のみで、効果の数値は本記事の情報源には含まれていないためです。
1. 案件の概要 ── Before / After
まず全体像です。
| 項目 | Before(旧サイト) | After(新サイト) |
|---|---|---|
| 実装 | 静的 HTML + PHP(フォーム送信用スクリプトを含む) | 静的サイト生成(ビルドスクリプトが Markdown からページを生成) + Cloudflare Pages |
| ドメイン | douzucarry.com に加え、旧LP用の別ドメインが複数分散 |
douzucarry.com に統合 |
| ブログ | 自動生成の ID 付き URL(例:/blog/dgrd0d8_ssb/)や日付ファイル名の .html URL が混在 |
意味のある slug の URL に統一(リポジトリ内 Markdown で管理) |
| 問い合わせ導線 | 電話・メール・LINE見積もりに加え、使われていないフォーム送信スクリプトが残置 | /contact/ に導線を集約 |
主要な固定ページ(トップ、サービス一覧、引越し、冷蔵冷凍配送、即日配送、施設入居引越し、料金、会社情報、FAQ、お問い合わせ)と、宮崎・都城・延岡・日南・小林・日向・西都・串間・えびのの9エリアページは、リニューアル後も URL をそのまま維持しています。変わったのは主に、旧ブログの意味のない URL と、使われていなかった残置スクリプトの扱いです。
なお、新サイトのデザインは、デジタル庁が公開しているデザインシステムを土台に構築しています。デザインをゼロから起こす工程を省くことで、その分の工数をこの記事で扱う URL 設計とコンテンツ引き継ぎに充てられました。この進め方の考え方は なぜ小村ソフトはデジタル庁デザインシステムでHPを作るのか にまとめています。
この事例のポイントを一言でまとめると、「見た目を変える前に、URL とコンテンツの棚卸しを済ませてから着手した」ということに尽きます。以降の章で、その手順を順番に説明します。
2. 最初にやったのはデザインではなくURL棚卸し
リニューアル着手時に最初に作ったのは、デザインのラフ案ではなく、旧サイトの全 URL を一覧化した棚卸し表でした。
具体的には、次の単位で漏れなく洗い出しています。
- 固定ページ(トップ、サービス一覧、引越し、冷蔵冷凍配送、即日配送、施設入居引越し、会社情報、プライバシーポリシー、FAQ、料金、ブログ、お問い合わせ)
- エリアページ9枚(宮崎・都城・延岡・日南・小林・日向・西都・串間・えびの)
- 旧ブログの個別記事(エリア密着のコラムから、単身引越しや長距離引越しのノウハウ記事まで100本超)
robots.txtやsitemap.xml、Search Console の所有権確認用ファイル、旧フォーム送信スクリプト(php/submit.php)などの「ページではないが公開されているファイル」
この棚卸し表ができて初めて、「新サイトでこの URL はどうするか」を1本ずつ判定する対応表(URL マッピング)を作れます。今回の対応表では、判定を大きく2種類に分けました。
| 判定 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| keep | URL を変更しない | /、/moving/、/area/miyazaki/、現行ブログ記事のURLなど |
| redirect | 新しい URL へ301リダイレクト | 旧ブログの自動生成ID URL、日付ファイル名の .html URL、php/submit.php |
固定ページとエリアページ、そして現行の意味のあるブログ記事URLは、すべて keep(変更なし)です。一方で、システムが自動採番した意味のないランダム文字列の URL(/blog/5lmln1lx0x/ のようなもの)や、post20210721.html のような日付ファイル名の URL は、意味のある slug を持つ新しい記事 URL へ301リダイレクトする設計にしました。
もう一つ、旧サイトに残っていた php/submit.php という送信先スクリプトも判定の対象でした。これは公開されている HTML 一式のどのフォームからも参照されておらず、実際に機能していた問い合わせ導線は電話・メール・LINE見積もりの3系統だけだと確認できたため、「残置された送信先スクリプト」と判断し、/contact/ へ301する扱いにしています(この判断の経緯は次の章と5章で詳しく触れます)。
リダイレクトの設計では、次の2点をルールとして徹底しました。
- 1ホップで完結させる(リダイレクトの連鎖=チェーンを作らない)
- ビルド時に宛先URLが実在するかを検証する仕組みを入れる(存在しないURLへ301してしまう事故を防ぐ)
デザインを検討するより前にこの棚卸しと対応表を固めておくと、後工程の実装やコンテンツ作成が「どの URL に何を置くか」という土台の上で進められるので、手戻りが減ります。これはこの案件に限らず、被リンクや検索流入がある旧サイトをリニューアルする際の基本手順として、他の案件にもそのまま当てはまる考え方です。
3. コンテンツを「落とさない」ための保持チェックリスト
URL の設計と並行して行ったのが、旧サイトに書かれていた情報を新サイトでも欠かさず出せているかを確認するための、コンテンツ保持チェックリストの作成です。
リニューアルでは、デザインを新しくする過程で、細かい訴求文言や数字がいつの間にか抜け落ちることがあります。特に料金、営業時間、連絡先、強みといった「問い合わせ判断に直結する情報」が抜けると、見た目は良くなったのに問い合わせが減るという事故につながりかねません。
そこで、主要ページごとに旧サイトの必須情報を書き出しました。一部を挙げると、次のような内容です。
| ページ | 保持すべき主な要素 |
|---|---|
トップ(/) |
単身8,000円〜、宮崎⇔大阪間毎日運行、LINE見積もり、3,000円割引、年中無休8:00〜20:00、電話番号、口コミ・評価・保険の案内 |
引越し(/moving/) |
2時間13,500円〜・最安8,000円〜、単身・ファミリー・オフィス移転、大型荷物運搬・家具設置、不用品引取り、夜間早朝対応、特別仕様ハイルーフ車 |
料金(/price/) |
格安シンプル8,000円〜、お手軽19,800円〜、ラクラク29,800円〜の3プランと、荷物量・作業人数・エリア料金・オプションの考え方 |
会社情報(/company/) |
代表・道頭清志氏、10代から引越し業界で20年以上、宮崎から全国へ配送、対応エリアの広さ |
FAQ(/faq/) |
キャンセル料、梱包資材の事前提供、美術品・仏壇などの特殊輸送、段ボール1つからの依頼、長距離費用の抑え方 など |
冷蔵冷凍配送(/refrigerated/) |
−20℃対応の冷凍機搭載車、食品・医薬品・研究資材の温度管理輸送、24時間365日対応、定期便・ルート配送 |
施設入居引越し(/senior/) |
介護施設入居引越し、荷造り・荷解き・清掃・不用品処分、介護ベッド・車いす・仏壇・ペット同伴への対応 |
このチェックリストを作った上で、新サイト公開前に新旧のページを1つずつ照合し、要素が欠けていないかを確認しました。デザインが変わっても、料金や営業時間、強みといった「判断材料」がそのまま引き継がれていることを、勘や記憶に頼らずリストで担保したという点がポイントです。
4. ローカルSEO ── エリアページ9枚の設計
旧サイトから引き継いだページの中には、宮崎・都城・延岡・日南・小林・日向・西都・串間・えびのという、9つのエリアごとの個別ページがあります。
これらのエリアページは、「地名+引越し」「地名+配送」といった、地域名を含む検索クエリの受け皿として用意されているページです。運送・引越しのように商圏が地域に紐づくサービスでは、トップページや料金ページだけでは拾いきれない、地名を含む検索ニーズに対応する役割を持ちます。
URL 対応表を見ると、/area/miyazaki/ から /area/ebino/ までの9枚はすべて keep(URL変更なし)と判定されており、リニューアルでこの構成自体は変えていません。あわせて、各エリアに紐づく形で、地域の具体的な地名(たとえば宮崎市内の各地区や都城市内の各地区など)を扱ったブログ記事も多数あり、エリアページとブログ記事が補完し合う構成になっています。
エリアページのような「同じフォーマットを地名だけ変えて量産する」タイプのページは、内容が薄いと検索エンジンにも読み手にも「同じページの使い回し」に見えてしまうリスクがあります。今回のケースでは、エリアページ本体に加えて、エリア内の地区単位の詳細をブログ記事側で個別に書き分けるという役割分担を旧サイトから引き継ぐ形にしており、量産ページ特有の「薄さ」を避ける構成が既にできていました。リニューアルではこの構成を壊さず、URL もそのまま維持しています。
5. 散らばっていた問い合わせ導線の集約
3章で触れた php/submit.php の扱いは、問い合わせ導線を整理する上でも重要な判断でした。
旧サイトを調べた結果、公開されている問い合わせ導線として実際に機能していたのは、次の3系統だけだと確認できました。
- 電話(0120-931-677、受付時間8:00〜20:00)
- メール
- LINE見積もり
一方で php/submit.php という送信先スクリプト自体はコード上に残っていたものの、公開されている HTML のどのフォームからも参照されていませんでした。つまり、実際には使われていない「残置スクリプト」だったということです。これを踏まえて、新サイトでは電話・メール・LINE見積もりの3系統を /contact/ ページに集約し、php/submit.php へのアクセスは /contact/ へ301する設計にしています。
問い合わせ導線が複数のページやスクリプトに分散していると、どこが実際に使われているのか、リニューアルのタイミングで見えなくなりがちです。今回のように「実際に機能している導線はどれか」を先に洗い出してから集約する進め方は、トップページ・サービスページ・問い合わせページの導線を見直す一般論としても当てはまります。この考え方は、以前書いた 問い合わせが来ないサイトで、先に直すべき3つの場所 でも扱っていますので、あわせて参考にしてください。
6. 旧ドメインの整理 ── 放置されたLPドメインの扱い
運送会社のようにサービスごとにランディングページを別途作ってきた会社では、いつの間にかドメインが複数に分散していることがあります。今回のケースでも、次のようなドメインの整理が必要でした。
| ドメイン | 状態 | 対応方針 |
|---|---|---|
www.douzucarry.com |
apex(douzucarry.com)と同一内容を200で重複配信 |
Cloudflare の Redirect Rules で apex への301を計画 |
| 日本語ドメイン(punycode表記のドメイン) | 既に douzucarry.com へ301設定済み |
対応済みのため維持 |
| 冷蔵冷凍配送の旧LP用ドメイン | DNSが失効している疑いがあり名前解決できない状態 | コンテンツ自体は /refrigerated/ へ移植済み。ドメイン側の301は、ドメインが復旧しない限り設定不可能という制約が残る |
特に3つ目のケースは、教訓として重要です。旧・冷蔵冷凍配送LPの内容(−20℃対応の冷凍機搭載車、24時間365日対応、定期便・ルート配送といった訴求)は新サイトの /refrigerated/ に移植済みですが、旧ドメイン自体がDNS失効の疑いで名前解決できなくなっているため、旧ドメインからの301リダイレクトを設定できません。ドメインを維持・更新せずに放置すると、そのドメインに蓄積されていた被リンク評価や指名検索の流入を、ある日突然失ってしまう可能性があるということです。
サービスLPを別ドメインで運用している会社がリニューアルを検討する際は、コンテンツの統合先を決めるだけでなく、旧ドメインの契約状況(更新が続いているか、DNSが生きているか)も同時に確認しておくことをおすすめします。復旧できるうちに301を設定できるかどうかで、その後の評価の引き継ぎやすさが変わってきます。
7. 公開前検証と公開後にやること
新サイトを公開する前には、次のような確認を行いました。
- 2章・3章で作ったコンテンツ保持チェックリストとの照合(新旧ページの要素が揃っているか)
- 301リダイレクトの実測確認(実際にリクエストを送り、想定通りのステータスコードと転送先が返るか)
- Search Console の所有権確認用ファイルが、正しく200を返すこと
robots.txt・sitemap.xml・_headersといった公開に必要なファイルが、実際に公開されていること
公開後についても、やるべきことがあります。
sitemap.xmlを Search Console に再送信する- URL検査ツールで、旧ブログのID付きURLや日付ファイル名の
.htmlURLが、想定通り301になっているか個別に確認する - カバレッジレポートで、以前は404やインデックス外だった旧URLが「リダイレクト」として認識されるようになるかを、数週間かけて確認する
リニューアル作業は「公開したら終わり」ではなく、公開後にリダイレクトが検索エンジン側にきちんと認識されるまでをモニタリングして初めて完了する、という前提で計画しておくと安心です。
8. まとめ ── リニューアルで失敗しないための一般則
今回のドーズキャリーサービス様の事例から、他のリニューアル案件にも共通して当てはまる考え方を整理すると、次のようになります。
- URL設計が先、デザインは後。 既存の検索流入や被リンクがある旧サイトでは、見た目を検討する前に、全URLの棚卸しと新URLへの対応表(301マッピング)を確定させる。
- 旧コンテンツの棚卸しなしに公開しない。 料金・営業時間・連絡先・強みといった「判断材料」は、新旧ページを1つずつ照合するチェックリストで確認してから公開する。
- 実際に使われている導線だけを残す。 使われていないフォームや送信先スクリプトを見つけたら、実態を確認した上で、生きている導線へ集約する。
- リダイレクトは1ホップ、宛先の実在確認をセットにする。 チェーンを作らず、存在しないURLへ飛ばさない仕組みを持っておく。
- ドメインは生きているうちに整理する。 サービスLP用の別ドメインを放置すると、DNS失効で復旧不能になり、評価を引き継ぐ機会自体を失う。
サイトリニューアルは、単にデザインを新しくする作業ではなく、これまで積み上げてきた検索評価や問い合わせ導線をどう引き継ぐかという設計作業でもあります。この事例の簡潔な概要は ドーズキャリーサービスの構成を整理した事例 にまとめていますので、あわせてご覧ください。
同じようにURL設計や既存コンテンツの引き継ぎに不安がある場合は、ホームページ制作 のご相談の中で、旧サイトの棚卸しから一緒に進められます。
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