保険証(いまはマイナ保険証の資格情報画面)に印字されている保険者番号。レセプト請求では必ず登場する8桁(ときどき6桁)の数字ですが、「この番号、実は読める」ことを知っているエンジニアは意外と少ないのではないでしょうか。先頭2桁で加入している制度が分かり、次の2桁で保険者の都道府県が分かり、末尾の1桁では検算までできる──つまり保険者番号は、ただの連番ではなく構造を持ったコードです。
ORCAシリーズの4本目は、予告していたレセプト点検の話の前に、この保険者番号を番外編として1本立てで解剖します。扱うのは次の4点です。
- 保険者番号の構成 ── 法別番号・都道府県番号・保険者別番号・検証番号
- 検証番号(チェックデジット)の手計算と、ORCAのCOBOL実装
- 旧・政府管掌健康保険(現・協会けんぽ)だけ「4桁」だった歴史の特例
- その特例の痕跡が、2026年公開のORCAソースに今も生きていること
制度側の記述は厚生労働省の「保険者番号、公費負担者番号、公費負担医療の受給者番号並びに医療機関コード及び薬局コード設定要領」(以下「設定要領」)を一次資料とし、実装側は前回までと同じく、公式公開されている日レセ本体 5.2系ソース(2026年7月公開スナップショット) を実際に読んで確認した結果に基づきます。
目次
- まず結論 ── 保険者番号は「制度+地域+連番+検算」でできている
- 法別番号 ── 先頭2桁で制度が分かる
- 都道府県番号と保険者別番号 ── どこの保険者かまで分かる
- 検証番号 ── モジュラス10ウェイト2-1を手計算する
- 例外の話 ── 旧政管健保の保険者番号は「4桁」だった
- 保険者番号から「分からないこと」
- ORCAはどう実装しているか ── 2つのマスタと桁数の分岐
- 番号を扱うシステムを作る側の実務ポイント
- まとめ
- 参考資料
1. まず結論 ── 保険者番号は「制度+地域+連番+検算」でできている
設定要領の第1は、保険者番号をこう定めています。
| 位置 | 桁数 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 1〜2桁目 | 2 | 法別番号 | 医療保険制度の区分(協会けんぽ、組合健保、後期高齢者医療…) |
| 3〜4桁目 | 2 | 都道府県番号 | 保険者の所在地の都道府県 |
| 5〜7桁目 | 3 | 保険者別番号 | 制度・都道府県の中での保険者ごとの番号 |
| 8桁目 | 1 | 検証番号 | チェックデジット(モジュラス10ウェイト2-1) |
ただし例外が本則に書かれています。国民健康保険(退職者医療を除く)だけは法別番号を持たず、都道府県番号2桁+保険者別番号3桁+検証番号1桁の計6桁です。保険証の保険者番号が6桁だったら、それだけで「市町村国保か国保組合」と分かります。
設定要領に載っている例をそのまま使うと、06130488という保険者番号は次のように読めます。
06 13 048 8
│ │ │ └ 検証番号(第4章で検算します)
│ │ └ 保険者別番号: 東京の組合の中での048番
│ └ 都道府県番号: 13 = 東京
└ 法別番号: 06 = 組合管掌健康保険
「東京都にある健康保険組合のひとつ」というところまで、マスタを引かずに番号だけで分かるわけです。以降の章で各部品を順に見ていきます。
2. 法別番号 ── 先頭2桁で制度が分かる
法別番号は設定要領の別表1(1)「法別番号及び制度の略称表」で定められています。医療保険制度の主なものを抜粋します。
| 法別番号 | 制度 | 略称 |
|---|---|---|
| 01 | 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険。旧・政府管掌健康保険) | (協) |
| 02 | 船員保険 | (船) |
| 03 / 04 | 日雇特例被保険者の保険(一般療養 / 特別療養費) | (日) |
| 06 | 組合管掌健康保険 | (組) |
| 07 | 自衛官等の療養の給付 | (自) |
| 31〜34 | 共済組合(国家公務員 / 地方公務員等 / 警察 / 公立学校・私学振興) | (共) |
| 39 | 後期高齢者医療 | (高) |
| 63, 72〜75 | 特例退職(特定健保組合 / 各特定共済組合) | (退) |
| 67 | 国民健康保険法による退職者医療 | ─ |
| (なし・6桁) | 国民健康保険(退職者医療を除く) | ─ |
読み方の実務的なポイントは3つあります。
- レセプトの提出先が分かれる。 被用者保険(01〜34、63、72〜75)のレセプトは社会保険診療報酬支払基金へ、国民健康保険(6桁と法別67)と後期高齢者医療(39)は国民健康保険団体連合会へ提出します。レセプト請求の世界で「社保」「国保」と呼び分けている区分は、保険者番号の先頭を見れば機械的に判定できるということです。
- 国保系なのに8桁の番号がある。 国保の退職者医療(67)は、国保制度でありながら例外的に法別番号付きの8桁です。「6桁=国保、8桁=社保」と単純化して実装すると、ここで踏み抜きます。
- 1保険者=1番号ではない。 別表1の注記にあるとおり、63・72〜75は特例退職被保険者のための法別番号です。同じ健康保険組合が、一般の被保険者向けに06の番号、特例退職被保険者向けに63の番号と、複数の保険者番号を持つことがあります。
なお、よく似た8桁の番号に公費負担者番号があります(生活保護の12、精神通院医療の21など)。構成も「法別2桁+都道府県2桁+実施機関3桁+検証1桁」とそっくりですが、これは医療保険の保険者番号とは別体系です。レセプトでも記載欄が別に用意されています。混同の注意点は第6章で改めて触れます。
3. 都道府県番号と保険者別番号 ── どこの保険者かまで分かる
3〜4桁目の都道府県番号は、設定要領の別表2で01(北海道)〜47(沖縄)と定められています。並びは一般によく使われる都道府県コード(JIS)と同じで、東京は13、大阪は27です。基準は保険者の所在地なので、全国転勤のある会社でも、健保組合の所在地が東京なら13になります。
5〜7桁目の保険者別番号は、その制度・都道府県の中で保険者ごとに振られる番号です。誰が番号を決めるかも通知に明記されており、現行の規定では、協会けんぽは都道府県支部ごとに厚生労働省保険局が、組合健保は健康保険組合ごとに地方厚生(支)局が、国保は市町村・国保組合ごとに都道府県が、後期高齢者医療は後期高齢者医療広域連合が、共済組合は各主管官庁が定めます(昭和51年の制定当初は社会保険庁長官や都道府県知事が設定者でしたが、行政組織の再編とともに現在の機関へ引き継がれています)。
つまり保険者番号は、全国で一元採番されているのではなく、「制度×都道府県」の枠の中で分散採番されているコードです。連番部分だけを取り出しても意味はなく、法別番号・都道府県番号と組にして初めて保険者を一意に指します。このことは、後で見るORCAのマスタ設計(保険者マスタのキーが保険者番号そのものであること)とも整合します。
ちなみに協会けんぽは法人としては全国健康保険協会ひとつですが、保険者番号は都道府県支部ごとに振られています(平成20年9月18日庁保険発第0918001号)。「保険者番号が識別する単位」と「法人としての保険者」は一致しないことがある、という好例です。
4. 検証番号 ── モジュラス10ウェイト2-1を手計算する
末尾1桁の検証番号の算出方法も、設定要領に手順として書かれています。
- 検証番号を除く各桁に、末尾の桁を起点として順次2と1を乗じる
- 積の和を求める。ただし積が2桁になる場合は、1桁目と2桁目の数字の和とする
- 10と「2の和の下1桁」との差を検証番号とする。ただし下1桁が0のときは検証番号を0とする
いわゆるモジュラス10ウェイト2-1(M10W21)です。第1章の06130488で検算してみます。
桁: 0 6 1 3 0 4 8
重み: 2 1 2 1 2 1 2 ← 右端(8)を起点に 2,1,2,1…
積: 0 6 2 3 0 4 16
和: 0 + 6 + 2 + 3 + 0 + 4 + (1+6) = 22
検証番号: 10 - 2 = 8 ✓ (末尾の8と一致)
コードにすると数行です。
def check_digit(code: str) -> int:
"""検証番号を除いた保険者番号の桁列からチェックデジットを求める"""
total = 0
for i, ch in enumerate(reversed(code)):
n = int(ch) * (2 if i % 2 == 0 else 1)
total += n // 10 + n % 10
return (10 - total % 10) % 10
assert check_digit("0613048") == 8
ここで実装上の罠をひとつ。重みの「2,1,2,1…」は右端起点と定義されています。実は保険者番号に限れば、検証対象の桁列が7桁(8桁番号)または5桁(6桁の国保)と奇数なので、左端から2,1,2,1…と掛けても割り当ては同じになります(奇数長では重みの並びが左右対称になるため)。危ないのはこのルーチンを偶数桁の番号に使い回した瞬間です。たとえば公費負担医療の受給者番号は受給者区分6桁+検証番号1桁で、検証対象が6桁の偶数。左端起点で書いた実装は、ここで全桁の重みが1つずれて別の値を返します。保険者番号だけでテストしていると絶対に気づけない、という性質の悪さがあります。
面白いことに、ORCAのソースにはまさにこの罠の痕跡が残っています。チェックデジットの算出・検証を一手に引き受ける共通サブプログラムcobol/common/ORCSCHKDGT.CBL(コンポーネント名「チェックデジット算出(チェック)」)は、保険者番号に限らず最大20桁の番号を受け取る汎用ルーチンですが、その修正履歴にはこうあります。
* プログラム修正履歴
* Maj/Min/Rev 修正者 日付 内容
* 01.00.01 MCC-太田 01/04/17 算術式の方法を右端から行う
2000年12月の新規作成から4か月後の2001年4月に「算術式の方法を右端から行う」修正が入っている──コメントアウトされて残る旧コードを読むと、初版は左端から順に重みを掛けていたと分かります。前述のとおり奇数桁の保険者番号では左端起点でも結果が一致してしまうので、この誤りは偶数桁の番号を検証して初めて表面化します。修正後のコードは、桁列の右端のインデックスをIDYに取り、IDYを減らしながら右端起点で重みを掛け、積が2桁になったらWRK-CD2-1 + WRK-CD2-2と分解して合計し、最後に10 - (和 mod 10)を返す、設定要領の手順そのままの実装になっています。25年前の修正履歴1行が、そのまま「チェックデジットは右端起点で書け。奇数桁のテストだけでは安心するな」という注意書きとして今も役に立つわけです。
5. 例外の話 ── 旧政管健保の保険者番号は「4桁」だった
ここまでが原則です。そして保険者番号には、歴史上最大の例外がありました。設定要領の第1の7にこうあります。
政府管掌健康保険(日雇特例被保険者の保険を除く。)の保険者番号についての特例 政府管掌健康保険(…)の保険者番号については、当分の間、上記1及び3にかかわらず、都道府県番号2桁及び保険者(市町村)別番号2桁を組み合わせた4桁の番号をもって保険者番号とするものとし、この場合の都道府県番号は、社会保険事務所の所在地の都道府県ごとに別表3に定める番号とする。
協会けんぽの前身である政府管掌健康保険(政管健保)は、中小企業の従業員が加入する、加入者数で国内最大級の制度でした。その最大制度の保険者番号が、
- 8桁ではなく4桁(法別番号なし、しかも検証番号もなし)
- 都道府県番号は通常の別表2ではなく専用の別表3
- 保険者は国(ひとつ)なのに、番号は社会保険事務所ごと
という三重の特例だったのです。別表3の番号は通常表とは似ても似つきません。
| 都道府県 | 通常の都道府県番号(別表2) | 政管専用(別表3) |
|---|---|---|
| 東京 | 13 | 21 |
| 神奈川 | 14 | 31 |
| 愛知 | 23 | 51 |
| 大阪 | 27 | 41 |
| 福岡 | 40 | 75 |
| 沖縄 | 47 | 82 |
この特例は「当分の間」のまま数十年続き、2008年10月1日の全国健康保険協会(協会けんぽ)発足でようやく解消されました。現在の要領(昭和51年通知の現行版)では、協会けんぽの保険者番号は都道府県支部ごとに定められた8桁の番号(前掲・庁保険発第0918001号)とされています。法別番号は政管時代と同じ01です。
ORCAのソースに残る「政管」の痕跡
制度上は2008年に終わった話ですが、レセコンは古いデータも扱い続けます。2026年公開のORCA 5.2系ソースには、政管4桁時代の痕跡がいまも現役で残っています。
その1: 桁数で制度を推定する分岐。 患者登録の保険入力チェックサブcobol/orca12/ORCSP03A.CBLは、入力された保険者番号の桁数を4・6・8のいずれかに限定した上で(それ以外はエラー)、保険者マスタ未登録の番号について桁数から制度(ORCA内部の「保険番号」)を推定します。
* 法より編集
EVALUATE WRK-MOJ-MAX
WHEN 4
* 政府管掌
MOVE "001" TO WRK-HKNJA-HKNNUM
WHEN 6
* 国保
MOVE "060" TO WRK-HKNJA-HKNNUM
WHEN 8
* その他
PERFORM 1003-HKNNUM-HBTNUM-SEC
END-EVALUATE
4桁なら政府管掌(内部コード001)、6桁なら国保(060)、8桁なら先頭2桁の法別番号でマスタを引く。第1〜3章で見た番号体系の知識が、そのままCOBOLの分岐になっています。そして4桁の政管番号には検証番号がないので、直前のモジュラス10チェックも「桁数が4より大きいとき」だけ実行されます。特例は検算のロジックにまで波及しているのです。
その2: 政管と協会の読み替え。 データ移行・取込側にも対応があります。患者保険情報の取込バッチcobol/orcabt/ORCVTPTHKNINF.CBLには、
* 協会けんぽ対応
IF PTHKN-HKNNUM = "001"
* 政管で保険者番号が8桁は協会とする
IF WRK-LEN = 8
MOVE "009" TO PTHKN-HKNNUM
END-IF
END-IF
と、「政管(001)として入ってきたが保険者番号が8桁なら協会けんぽ(009)に読み替える」処理があります。内部的には旧・政管と現・協会けんぽが別の保険番号として共存しており、桁数が新旧を見分ける手がかりになっています。レセプト集計側のcobol/orcabt/ORCBG014.CBLでは、001と009を「政管は協会に変更になる」というコメントとともに同じ区分に束ねています。
その3: 表示名の書き換え。 極めつけは保険名称編集の共通ルーチンcobol/common/ORCSHKNMEI.CBLです。
01 CONST-H201001 PIC X(08) VALUE "20081001".
...
IF ( ORCSHKNMEI-SRYYMD >= CONST-H201001 )
AND ( COMB-HKNNUM = "001" )
INSPECT COMB-SYU-TANSEIDONAME
REPLACING ALL "政管" BY "協会"
END-IF
協会けんぽ発足日20081001が定数として埋め込まれ、診療日がそれ以降なら制度の短縮名に含まれる「政管」の文字列を「協会」に置換しています。マスタ上の名称は旧のまま、診療日に応じて表示だけ切り替える──2008年9月30日以前の診療なら今でも「政管」と表示される作りです。制度の歴史が、文字列置換1文で実行時に再現されているわけです。
6. 保険者番号から「分からないこと」
「どこまで分かるのか」を追ってきたので、境界線も引いておきます。保険者番号から分からないことです。
- 個人は特定できない。 保険者番号が指すのは保険者(の単位)までです。個人の識別は被保険者証の記号・番号(およびオンライン資格確認の個人単位化で追加された2桁の枝番)が担います。前回見たオンライン資格確認でも、照会条件は保険者番号+記号・番号+枝番の組でした。
- 自己負担割合は決まらない。 法別番号で制度は分かりますが、窓口負担は年齢や所得区分で変わります。「39だから1割」のような短絡は禁物で、負担割合は資格確認の結果(高齢受給者証・限度額認定情報など)で判定するものです。
- 保険者の名称・連絡先は出てこない。 番号から「東京の組合健保の048番」までは分かっても、それがどの組合かは保険者マスタと突き合わせて初めて分かります。番号体系は検索キーを与えてくれるだけです。
- 公費負担者番号とは別世界。 生活保護(法別12)や自立支援医療(21)などの8桁番号は公費負担者番号であり、保険者番号の法別番号表とは別の表で採番されています。同じ「8桁・法別2桁+都道府県2桁+3桁+検証1桁」構造なので、フォーマットだけ見て同一視すると事故になります。レセプト上も保険と公費は別の欄です。
7. ORCAはどう実装しているか ── 2つのマスタと桁数の分岐
第5章で見た分岐の背後にある、ORCAの保険者番号まわりのデータ設計を整理します。登場するマスタは大きく2つです。
保険番号マスタtbl_hknnumは「制度」の層です。制度は3桁の内部コード「保険番号」(001=政管、009=協会けんぽ、060=国保、039=後期高齢者…)で識別されます。ただし実際の主キーは保険番号単独ではなく、医療機関番号・適用開始日・区分(HOSPNUM, HKNNUM, TEKSTYMD, PAYKBN)を含む複合キーで、同じ制度のレコードを適用期間の世代として重ねられる構造です──負担割合のような属性が制度改定で変わっても、期間で引き当てられるわけです。定義(record/tbl_hknnum.db)には法別番号HBTNUM、制度名称SEIDONAME/短縮名TANSEIDONAMEのほか、本人・家族×入院・外来ごとの負担率や上限額のフィールドが並びます。注目は3つのチェック区分です。
HBTNUMCHKKBN── 法別番号チェック区分KENSNUMCHKKBN── (負担者番号の)検証番号チェック区分JKYSKENSNUMCHKKBN── 受給者番号の検証番号チェック区分
番号チェックを掛けるかどうかが制度ごとのマスタ設定になっている、ということです。実際、公費入力チェックサブcobol/orca12/ORCSP03B.CBLを読むと、負担者番号のモジュラス10チェックはKENSNUMCHKKBN = "1"のときだけ実行され、受給者番号は区分が"3"ならエラーではなく警告(確認すれば通せる)扱いになっています。公費の受給者番号には自治体ごとに検証番号のない体系が混在するので、チェックの強度をデータで調整できるようにしているわけです。バリデーションをコードに直書きせずマスタに逃がすこの設計は、制度の多様性に25年付き合ってきたレセコンの知恵と言えます。
保険者マスタtbl_hknjainfは「保険者」の層です。キーは医療機関番号+保険者番号そのもので、保険者名称・郵便番号・住所・電話番号・被保険者証の記号、そして所属する制度(保険番号)を持ちます(record/tbl_hknjainf.db)。第5章のORCSP03A.CBLの処理順は、この二層構造を前提にしています。
- 保険者番号の桁数が4・6・8以外なら即エラー
- まず保険者マスタ(
tbl_hknjainf)を検索。登録済みなら名称・住所・給付率・制度がすべて確定 - 未登録なら、4桁超に限りモジュラス10で検算(
ORCSCHKDGT呼び出し) - 桁数と法別番号から制度を推定(4桁→政管、6桁→国保、8桁→
tbl_hknnumを法別番号で検索)
つまり「番号体系から導けること」は未登録時のフォールバックであり、正はあくまでマスタという優先順位です。第6章の「番号から名称は分からない」という限界に対する、実装側の答えがこの2段構えです。
ちなみに保険者番号を保持するフィールドHKNJANUMはPIC X(08)──数値型ではなく8桁の文字列として定義され、COBOLソース650本以上から参照されています。先頭が0の番号(法別01〜07など)を数値で持つと先頭ゼロが落ちる、という次章の注意点を、型の選択が最初から回避している形です。
8. 番号を扱うシステムを作る側の実務ポイント
保険者番号(および同型の公費負担者番号)を扱うシステムを設計・実装するときの要点をまとめます。
- 文字列で持つ。数値で持たない。 法別01〜07台の番号は先頭が0です。Excelを経由した瞬間に先頭ゼロが落ちて7桁になる事故は、医療データ連携の定番トラブルです。CSVの取込側では「桁数が足りない番号」を検知して弾く・警告する設計にしてください。
- 桁数は4・6・8の3通りを前提に。 現行の新規データは6桁(国保)と8桁ですが、過去データには旧政管の4桁が存在し得ます(第5章)。ORCAが今も4桁を受け付けているのは、この歴史への配慮です。「8桁固定・ゼロ埋め」の正規化を安易にやると、旧データや他システムとの突合で不一致を起こします。
- チェックデジット検証は「掛けられる番号」にだけ掛ける。 M10W21の検算は強力ですが、旧政管4桁には検証番号がなく、公費の受給者番号には検証番号のない体系もあります。ORCAのように「どの番号に検証を掛けるか」をマスタの設定に逃がし、警告とエラーを使い分けるのが実戦的です。
- 法別番号での分岐はマスタ駆動にする。 提出先(支払基金/国保連)の判定などで法別番号を使う場合、法別番号→制度の対応表をコードに直書きせず、マスタ(テーブル)に持たせてください。法別番号は制度改正で追加されてきた歴史があり、今後も増え得ます。
- 保険者番号と公費負担者番号を同じ列に入れない。 構造が同じでも体系が別物です(第6章)。データモデル上も別項目にし、突合キーには「番号の種類」を含めることをおすすめします。
- オンライン資格確認の時代でも保険者番号は現役。 マイナ保険証への移行で記号・番号を意識する場面は減りますが、オン資の照会・応答XMLにも
InsurerNumber(保険者番号)は健在で、レセプトの請求先判定も保険者番号ベースのままです。「そのうち消える番号」ではなく、資格情報の基幹キーとして残る前提で設計してください。
9. まとめ
- 保険者番号は法別番号2桁+都道府県番号2桁+保険者別番号3桁+検証番号1桁の8桁(国保のみ法別なしの6桁)。先頭2桁で制度と請求先(支払基金/国保連)が、次の2桁で保険者の都道府県が分かる。
- 末尾の検証番号はモジュラス10ウェイト2-1。重みは右端起点で、奇数桁の保険者番号では左端起点の誤実装でも偶然一致するが、偶数桁の番号(公費の受給者番号など)に使い回すと破綻する。ORCAの共通サブ
ORCSCHKDGT.CBLには2001年に「算術式の方法を右端から行う」と修正した履歴が残っている。 - 最大の例外は旧・政府管掌健康保険。「当分の間」のまま数十年、専用の都道府県番号表を使った4桁(法別番号も検証番号もなし)で運用され、2008年10月の協会けんぽ発足で8桁化された。
- ORCAのソースには、4桁→政管と推定する分岐、8桁なら協会けんぽに読み替える取込処理、診療日が2008年10月1日以降なら表示名の「政管」を「協会」に置換する処理と、この特例の痕跡が2026年の現役コードとして残っている。
- 番号から分かるのは保険者の単位まで。個人・負担割合・保険者名称は分からない。実装は「制度マスタ+保険者マスタ」の二層で持ち、番号体系からの推定は未登録時のフォールバックに徹するのがORCA流であり、番号を扱うシステム一般に応用できる。
シリーズ次回は、当初の予告どおりレセプトの点検・査定のロジックを予定しています。医療機関内のデータチェックと審査支払機関側のコンピュータチェックがそれぞれ何を見ているのかを、同じくソースと公開資料から分解します。
10. 参考資料
- 保険者番号、公費負担者番号、公費負担医療の受給者番号並びに医療機関コード及び薬局コード設定要領(厚生労働省・平成20年3月版 別添2 PDF) ── 本文の構成・検証番号の算出手順・法別番号表(別表1)・都道府県番号表(別表2)・政管特例(第1の7)と専用番号表(別表3)の引用元
- 保険者番号等の設定について(昭和51年8月7日庁保発第34号・保発第45号、現行版) ── 協会けんぽの保険者番号を都道府県支部ごとの番号(平成20年9月18日庁保険発第0918001号)とする現行規定
- 保険者番号について - 協会けんぽ(全国健康保険協会) ── 都道府県支部ごとの現行保険者番号の一覧
- 日レセ本体 5.2系ソースコード(2026年7月公開スナップショット)
cobol/common/ORCSCHKDGT.CBL/cobol/orca12/ORCSP03A.CBL/cobol/orca12/ORCSP03B.CBL/cobol/common/ORCSHKNMEI.CBL/cobol/orcabt/ORCVTPTHKNINF.CBL/cobol/orcabt/ORCBG014.CBL/record/tbl_hknnum.db/record/tbl_hknjainf.dbほか ── 本文中の実装・修正履歴・テーブル定義の記述はすべてこのスナップショットに基づく
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よくある質問
この記事のテーマについて、相談時によくある質問をまとめています。
- 保険者番号から個人を特定できますか?
- できません。保険者番号が識別するのは「どの保険者(協会けんぽ○○支部、○○健康保険組合、○○市の国保など)か」までです。個人の識別は被保険者証の記号・番号(オンライン資格確認の個人単位化で追加された2桁の枝番を含む)が担っており、保険者番号とは別の項目です。
- 保険者番号が6桁の保険証と8桁の保険証があるのはなぜですか?
- 国民健康保険(退職者医療を除く)だけは、法別番号を持たない6桁(都道府県番号2桁+保険者別番号3桁+検証番号1桁)と定められているためです。被用者保険(協会けんぽ・組合健保・共済など)と後期高齢者医療、国保の退職者医療(法別67)は、法別番号2桁を先頭に付けた8桁です。
- 保険者番号の最後の1桁は何の数字ですか?
- 検証番号(チェックデジット)です。末尾を除く各桁に右端から順に2、1、2、1…を掛け、積が2桁になれば1桁ずつに分けて合計し、その和の下1桁を10から引いた数(下1桁が0なら0)が検証番号になります。いわゆるモジュラス10ウェイト2-1方式で、入力ミスの多くをこの1桁で検出できます。
- 昔の協会けんぽ(政府管掌健康保険)の保険者番号が4桁だったというのは本当ですか?
- 本当です。厚生労働省の設定要領に「政府管掌健康保険の保険者番号は当分の間、都道府県番号2桁+保険者別番号2桁の計4桁とする」という特例が明記されていました。しかも都道府県番号は通常の表とは別の専用表(東京=21、大阪=41など)でした。2008年10月の協会けんぽ発足に伴い、都道府県支部ごとの8桁番号に切り替えられています。
著者プロフィール
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小村 豪
合同会社小村ソフト 代表
Windows ソフト開発、技術相談、不具合調査を中心に、既存資産が残る案件や原因が見えにくい障害調査に強みがあります。
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