VBA とは何か - 制約、将来性、置き換えるべき場面と現実的な移行パターン
VBA の相談では、次のような話がよく混ざります。
- そもそも VBA って何なのか
- マクロは危ないと言われるが、もう使うべきではないのか
- これから使えなくなるのか
- Office Scripts や Power Automate に全部移せばよいのか
- 既存の
.xlsmや Access 資産は残すべきか、捨てるべきか - Excel を夜間バッチやサーバーで動かしてもよいのか
このへんは、1 つの答えで全部きれいに片づくテーマではありません。
最初に見るべきなのは、新しいか古いか よりも、どこで実行するのか、誰が使うのか、Excel / Access そのものが UI なのか、無人実行なのか です。
この記事では、VBA とは何か、どこに制約があるのか、これから使えなくなるのか、置き換えるべき場面はどこか、どう段階移行すると現実的か、という順番で整理します。
なお、内容は 2026 年 3 月時点 で確認できる Microsoft の公式情報を前提にしています。12345
目次
- 1. まず結論
- 2. VBA とは何か
- 3. なぜ今でも使われるのか
- 4. VBA の主な制約
- 4.1 デスクトップ前提である
- 4.2 セキュリティと配布の摩擦が大きい
- 4.3 32bit / 64bit の壁がある
- 4.4 無人実行・サーバー実行に向かない
- 4.5 保守性・テスト性・差分管理で不利になりやすい
- 4.6 VBScript 依存がある場合は別の注意が必要
- 5. VBA はこれから使えなくなるのか
- 6. 置き換えるべきケース / 置き換えなくてよいケース
- 7. 現実的な置き換え先
- 7.1 Excel を残して、中身だけ .NET や別プロセスへ出す
- 7.2 無人実行や帳票生成は、Office アプリ自動化ではなくファイル直接生成へ寄せる
- 7.3 Microsoft 365 上の業務フローなら Office Scripts + Power Automate
- 7.4 クロスプラットフォーム拡張が欲しいなら Office Add-ins
- 7.5 Excel / Access 自体が本来の UI ではなくなっているなら、Windows アプリや Web アプリへ出す
- 8. 段階移行の進め方
- 8.1 まず資産台帳を作る
- 8.2 コードを責務で分ける
- 8.3 置き換え先を責務ごとに決める
- 8.4 先にインターフェイスを固める
- 8.5 並行稼働で比較する
- 9. よくある失敗
- 9.1 「VBA は古いから、全部 Office Scripts へ」で始める
- 9.2 無人実行なのに Excel 自体を起動し続ける
- 9.3 画面、帳票、業務ルールを同時に全部変える
- 9.4 32bit / 64bit と外部参照を後回しにする
- 9.5 VBScript の話と VBA の話を混同する
- 10. まとめ
- 11. 関連記事
- 12. 参考資料
1. まず結論
先に結論だけ並べると、だいたい次のようになります。
- VBA は Office デスクトップアプリを拡張するためのイベント駆動言語 です。Excel や Word、PowerPoint、Access などの中で動くことが前提の技術です。1
- 少なくとも 2026 年 3 月時点で、Microsoft の公式情報として 「VBA 自体を近いうちに終了する」 という明確なアナウンスは確認できません。いま起きているのは「突然の全廃」よりも、使える場所と前提条件がはっきりしてきた という変化です。1234
- 具体的には、Excel for the web では VBA を作成・実行・編集できません。また、インターネット由来ファイルのマクロは既定でブロック されます。23
- したがって、いまの論点は「VBA を全部捨てるか」ではなく、どの領域を VBA に残し、どの領域を外へ出すか です。
- 特に、無人実行、サーバー実行、複数人運用、ブラウザ対応、中央配布、厳しい監査 が必要な処理は、VBA だけで抱え込まないほうが自然です。Microsoft も、Office のサーバー側自動化を推奨・サポートしていません。6
- 置き換え先は 1 つではありません。
Excel を残すなら.NETDLL や別プロセスへ処理を逃がす、Microsoft 365 上の業務フローなら Office Scripts + Power Automate、クロスプラットフォーム拡張なら Office Add-ins、そもそも Excel が UI ではなくなっているなら Windows アプリや Web アプリへ出す、という分け方が現実的です。456
要するに、VBA は「即死する技術」ではなく、「適材適所が明確な技術」 として見るのが実務的です。
2. VBA とは何か
VBA は Visual Basic for Applications の略で、Microsoft Office に付属する Visual Basic の一種です。Microsoft の公式ドキュメントでも、Office アプリケーションを拡張するためのイベント駆動型プログラミング言語 と説明されています。17
ここで重要なのは、VBA を 汎用のアプリ開発基盤 として見るより、Office アプリの内側に差し込む拡張言語 として見るほうが実態に近い、という点です。
たとえば Excel なら、次のような対象に近い場所で動きます。
WorkbookWorksheetRange- ボタンやフォーム
- ブックを開いたとき、保存したとき、セル変更時のイベント
つまり VBA の強みは、Excel や Access の画面・帳票・ブック構造にとても近い ことです。
利用者がデスクトップの Office を開いて、ボタンを押して、ローカルファイルや共有フォルダのデータを処理して、そのまま帳票を出す。そういう 「利用者の手元で完結する自動化」 には今でも強みがあります。1
逆に言うと、VBA の本来の守備範囲は、最初から サーバー、ブラウザ、モバイル、マルチテナントな Web システム ではありません。
3. なぜ今でも使われるのか
VBA が今でも現場に残り続ける理由は、単に「古いから惰性で残っている」だけではありません。
まず、Excel や Access には、単なるデータではなく 業務手順そのもの が入り込みやすいです。
- 帳票の見た目
- 印刷設定
- 入力チェック
- 月次処理の順番
- 部門ごとの例外ルール
- 現場が長年慣れた操作手順
このへんは、別システムへ移すときに「コード移植」だけでは済みません。
見た目、操作、例外、運用 が一体になっているので、VBA 資産は見た目以上に仕様を抱えています。
また、VBA は Office のオブジェクトモデルに近いため、利用者の目の前にある Excel そのものを操作して結果を返す、という用途では手数が少ないです。
この近さは、後継候補を考えるときにも大事で、単に新しい技術へ書き換えればそれで終わり とは限りません。
実務では、次のように考えるのが自然です。
- Excel が UI であり続けるなら、VBA を一部残す価値がある
- Excel は入出力だけでよいなら、中身のロジックは外へ出しやすい
- Excel 自体がもう本来の UI ではないなら、作り直しの候補になる
4. VBA の主な制約
4.1 デスクトップ前提である
一番大きい制約はこれです。
VBA は、基本的に デスクトップ版 Office の内側 で動く技術です。
Microsoft の公式情報でも、Excel for the web では VBA を作成・実行・編集できず、マクロ付きブックを開いて編集はできても、VBA の実行はできない とされています。28
この時点で、次の要件とは相性が悪くなります。
- ブラウザで完結したい
- Mac / iPad / Web をまたいで同じ拡張を使いたい
- 管理者が中央配布したい
- ローカルの Excel デスクトップアプリに依存したくない
Microsoft 自身も、複数プラットフォーム向けの拡張を作りたいなら Office Add-ins を見るべき と VBA のドキュメント側で案内しています。95
4.2 セキュリティと配布の摩擦が大きい
VBA が「使えなくなった」と誤解されやすい理由の大きな部分は、実は セキュリティ強化 です。
Microsoft は、インターネット由来のファイルに含まれる VBA マクロを既定でブロック するようにしています。メール添付やダウンロードした .xlsm をそのまま開いても、昔より素直には実行されません。3
これはセキュリティとしては正しい方向です。
ただし運用側から見ると、
- 添付で配ると動かない
- 社外サイトから落としたテンプレートが動かない
- OneDrive / SharePoint / ネットワーク経由での扱いが分かりにくい
- 「有効化してください」という案内が運用の弱点になる
という摩擦が増えます。
つまり、VBA の問題は「言語機能」だけではなく、配布と信頼の設計 でも起きます。
4.3 32bit / 64bit の壁がある
Office は 32bit 版と 64bit 版があり、Office 2019 と Microsoft 365 では既定が 64bit です。7
そのため、古い VBA コードのうち、特に Windows API を Declare で呼んでいるもの は、64bit 環境でそのまま動かないことがあります。
Microsoft も、PtrSafe、LongPtr、LongLong などを使って 32bit / 64bit の差を吸収する必要があると案内しています。7
ここでつらいのは、コードだけでなく、次の依存も一緒に問題になりやすいことです。
- 古い COM / ActiveX / OCX
- 32bit 前提の外部 DLL
- レジストリ登録前提の部品
- Office の参照設定ずれ
つまり、VBA の移行は 言語の書き換え というより、Office bitness と外部依存の整理 になることがかなり多いです。
4.4 無人実行・サーバー実行に向かない
ここはかなり重要です。
Microsoft は、Office アプリケーションのサーバー側自動化を推奨・サポートしていない と明言しています。Office は、対話的なデスクトップとユーザープロファイルを前提に設計されており、無人環境では不安定やデッドロックが起き得ます。6
なので、次のような構成は危険寄りです。
- Windows サービスから Excel を起動する
- ASP.NET や DCOM から Office を自動化する
- タスクスケジューラ上で見えない Excel を延々回す
- サーバー上の Excel に帳票生成を丸投げする
「たまに動く」ことはあります。
ただ、動いていることと、支えられる構成であることは別 です。
無人実行が必要なら、まず疑うべきは VBA ではなく、Excel アプリ自体を運転する構成 のほうです。
4.5 保守性・テスト性・差分管理で不利になりやすい
VBA は、ブックや Access ファイルの中にコードが閉じ込みやすいです。
その結果、次の問題が起きやすくなります。
- どのファイルが正本なのか曖昧になる
- フォーム、シート、標準モジュールに責務が散る
- 参照設定や ActiveX 依存が環境ごとにずれる
- コードレビューや差分確認がしにくい
- 単体テストを作りにくい
- Excel のセル番地そのものが仕様化していく
これは VBA という言語だけの問題ではなく、「Office ファイルの中に業務ロジックを持つ」構造の問題 です。
小さな自動化では大きな問題にならなくても、業務システム化していくと急に効いてきます。
4.6 VBScript 依存がある場合は別の注意が必要
2025 年には、Microsoft 365 Developer Blog で Windows における VBScript の段階的廃止が、VBA プロジェクトにも影響し得る ことが案内されました。
特に、外部 .vbs を実行しているケース や、VBScript.RegExp の参照に依存しているケース は影響対象になります。10
一方で Microsoft は、Microsoft 365 Version 2508(Build 19127.20154)以降の Windows 版 Office では RegExp クラスを VBA に既定で含める 形でも対応を進めています。10
ここで大事なのは、VBScript の廃止と VBA の廃止は同じ話ではない ということです。
VBA そのものが消える話ではなく、VBA からぶら下がっていた一部の外部依存を見直す必要がある、という理解のほうが正確です。
5. VBA はこれから使えなくなるのか
結論から言うと、「明日から全部使えなくなる」ではありません。
ただし、「どこでも何にでも使える」時代でもありません。
少なくとも Microsoft の公式情報の読み方として、いま強く見えるのは次の方向です。
- デスクトップ Office の拡張としての VBA は引き続き存在する1
- Web / クロスプラットフォーム側は Office Scripts や Office Add-ins を使い分ける459
- マクロ配布の安全性は以前より厳しく扱う3
- VBScript 依存のような周辺部品は将来の影響を受け得る10
さらに、Microsoft は Office Scripts について、VBA はデスクトップ中心、Office Scripts は安全でクロスプラットフォームなクラウドベースのソリューション向け だと明示しています。
同時に、デスクトップ クライアントで使える Excel 機能のカバー範囲は、現時点では VBA のほうが広い とも説明しています。4
この 2 つを並べると、かなり実務的な見え方になります。
- デスクトップ Excel の深い操作 では、まだ VBA の守備範囲が広い
- ブラウザ / M365 / 共有ワークフロー では、Office Scripts や Add-ins のほうが自然
- だから、「全部 Office Scripts に変えればよい」でも、「VBA を永久に中心に置けばよい」でもない
要するに、VBA の将来は 消滅よりも境界の明確化 と見るのが自然です。
6. 置き換えるべきケース / 置き換えなくてよいケース
まずは雑だけれど役に立つ判断表を置きます。
| 状況 | 判断の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 利用者が自分の PC の Excel / Access を開いて使う、小規模な自動化 | そのまま使う、または軽く整理する | VBA の守備範囲にかなり合っています |
| Excel は UI と帳票だけ残したいが、ロジックが重くなっている | ハイブリッド化 する | VBA は薄く残し、重い処理は .NET や別プロセスへ出したほうが保守しやすいです |
| ブラウザ、Mac、iPad でも使いたい | VBA を中心にしない | VBA はデスクトップ前提で、Office Add-ins はクロスプラットフォームです5 |
| OneDrive / SharePoint 上のブックを、M365 ワークフローで回したい | Office Scripts + Power Automate を検討 | Office Scripts はクロスプラットフォーム / クラウド側の自動化向けです411 |
| 夜間バッチ、サーバー、サービスで無人実行したい | Excel 自動化をやめる | Microsoft は Office のサーバー側自動化を推奨・サポートしていません6 |
| 複雑な業務フロー、権限管理、監査、DB 連携が中心になっている | アプリ化 / システム化 を検討 | Office ファイル内ロジックでは限界が来やすいです |
この表で大事なのは、置き換えの判断軸が「VBA は古いから」ではない ことです。
本当に見るべきなのは、実行環境、運用、配布、依存、監査、拡張性 です。
7. 現実的な置き換え先
7.1 Excel を残して、中身だけ .NET や別プロセスへ出す
いちばん現実的で失敗しにくいのは、これです。
- 画面や帳票の入口は Excel / Access のまま
- ボタンや入力フォームも当面そのまま
- ただし、業務ロジック、HTTP、暗号、CSV / JSON、重い計算、ファイル処理は外へ出す
- VBA は「橋渡し」と「UI 操作」だけに寄せる
この構成の利点は、利用者の見た目と操作を壊しにくい ことです。
全面リプレイスよりも、まず 責務を薄くする 方向で進められます。
関連する記事:
「全部書き直す前に、まず重いところだけ逃がす」は、かなり実務向けです。
7.2 無人実行や帳票生成は、Office アプリ自動化ではなくファイル直接生成へ寄せる
Excel 帳票を夜間バッチやサービスで大量生成したいなら、まず疑うべきは「VBA が古いか」ではなく、Excel アプリを起動していること自体 です。
Microsoft は、サーバー側での Office Automation を推奨していません。
代わりに、Open XML 形式などを使って Office ファイルを直接扱う方法 を推奨しています。6
つまり、要件が
.xlsxを作りたい- 定型帳票を大量に出したい
- PDF 化したい
- 夜間バッチで回したい
のようなものなら、選ぶべき軸は Excel を運転するか ではなく、Excel ファイルを組み立てるか です。
関連する記事:
7.3 Microsoft 365 上の業務フローなら Office Scripts + Power Automate
業務がすでに OneDrive / SharePoint / Teams / Outlook / Forms の上に寄っているなら、Office Scripts はかなり候補になります。
Microsoft は、Office Scripts を安全でクロスプラットフォームなクラウドベースのソリューション向け と説明しています。
また、Power Automate と組み合わせることで、メールやフォームやスケジュールをトリガにして Excel 処理を自動化できます。411
ただし、ここも万能ではありません。
- Office Scripts は Excel レベルのイベントをサポートしません
- 実行は 手動開始 または Power Automate からの呼び出し が基本です4
- Power Automate 連携には Microsoft 365 のビジネスライセンス が必要です11
Run scriptアクションには、1 ユーザーあたり 1 日 1,600 回、同期処理 120 秒 などの制限があります12
つまり、Office Scripts は「VBA の置換物」より、M365 上の自動化部品 と見たほうが正確です。
7.4 クロスプラットフォーム拡張が欲しいなら Office Add-ins
Word、Excel、Outlook などを Windows / Mac / iPad / ブラウザ で拡張したいなら、Office Add-ins が第一候補です。
Microsoft の公式ドキュメントでも、Office Add-ins は HTML / CSS / JavaScript で構築でき、複数プラットフォームで動作し、中央配布にも向く と説明されています。5
これは、たとえば次のような要件に向いています。
- 社内ポータルや基幹システムと Office をつなぎたい
- Outlook / Excel / Word に同じ UI やコマンドを出したい
- ユーザーの PC ごとのマクロ配布ではなく、管理者配布したい
- ローカルな
.xlsm配布モデルから離れたい
VBA とは土俵が違うので、Excel の中にコードを書く 感覚とはかなり変わります。
その代わり、運用と配布は整理しやすくなります。
7.5 Excel / Access 自体が本来の UI ではなくなっているなら、Windows アプリや Web アプリへ出す
次のような状態なら、VBA の延命より アプリとして作り直す ほうが自然です。
- 画面遷移や権限制御が増えすぎている
- DB、監査ログ、承認フロー、ユーザー管理が中心
- 外部機器連携や長時間処理がある
- Excel のセルやフォームが業務仕様書の代わりになってしまっている
- ブックを閉じたら状態管理が消えること自体がつらい
この場合、Windows 前提の業務ツールなら C# / .NET のデスクトップアプリ、利用者や端末が広いなら Web アプリ のほうが構造を素直にできます。
8. 段階移行の進め方
VBA の置き換えで一番危ないのは、最初から全部を 1 つの新技術へ寄せようとすること です。
実務では、次の順番のほうがだいたい安全です。
8.1 まず資産台帳を作る
最初に洗い出したいのは、コード量そのものより 依存関係 です。
- どの
.xlsm/.xlam/.accdb/.mdbがあるか - どれが実運用の入口か
- 参照設定に何が入っているか
Declare、外部 DLL、COM / ActiveX / OCX は何か- 32bit / 64bit の前提はどうなっているか
- どのマクロが誰のどの手順で使われているか
- 出力物は何か(Excel、CSV、PDF、印刷、メール送信など)
ここを曖昧にしたまま置き換えると、あとで「誰も触っていないと思ったマクロが月末だけ生きていた」みたいな事故が起きます。
8.2 コードを責務で分ける
次にやるのは、ファイル単位ではなく 責務単位 で分けることです。
- Excel / Access の UI 操作
- シート入出力
- 帳票レイアウト
- 業務ルール
- 外部 API / ファイル / DB I/O
- バッチ処理
- 印刷 / 配布
この分け方をすると、残すもの、薄くするもの、外へ出すものが見えやすくなります。
8.3 置き換え先を責務ごとに決める
おすすめしやすい分け方は次です。
- UI とシート操作: 当面 VBA に残す
- 業務ロジック:
.NETDLL、別プロセス、サービスへ出す - 無人帳票生成: Open XML や直接生成へ寄せる
- M365 ワークフロー: Office Scripts + Power Automate
- クロスプラットフォーム UI: Office Add-ins
- 業務システム化した領域: Windows / Web アプリへ分離する
重要なのは、移行先を 1 つに統一しないこと です。
VBA 資産の中身は、だいたい複数の責務が混ざっています。
8.4 先にインターフェイスを固める
移行を始める前に、最低限ここは決めておいたほうがよいです。
- 入力は何か
- 出力は何か
- エラー時にどう返すか
- どのシート、どの名前付き範囲、どのファイルパスを契約にするか
- どの時点で結果が確定したとみなすか
ここを決めないまま進めると、セル番地そのものが API になって壊れやすくなります。
8.5 並行稼働で比較する
特に帳票や集計は、いきなり切り替えないほうが安全です。
- 旧 VBA 版と新実装版を並行で出す
- 出力された
.xlsx/ CSV / PDF を比較する - 日付、丸め、書式、印刷範囲の差を確認する
- 例外系と空データ系も試す
VBA 置き換えの事故は、たいてい「動くかどうか」ではなく、数字や書式が静かにずれる 形で起きます。
9. よくある失敗
9.1 「VBA は古いから、全部 Office Scripts へ」で始める
Office Scripts は有力ですが、Microsoft 自身が VBA のほうがデスクトップ Excel 機能のカバー範囲が広い と説明しています。
さらに、Office Scripts は Excel レベルのイベントをサポートしません。4
なので、深い Excel デスクトップ依存のマクロを、そのまま横移しする発想は危険です。
9.2 無人実行なのに Excel 自体を起動し続ける
これはかなり多いです。
動いている間は便利に見えますが、Microsoft は Office のサーバー側自動化を推奨していません。6
夜間バッチやサービスなら、Excel を運転する のではなく、Excel ファイルを組み立てる ほうへ寄せたほうが安全です。
9.3 画面、帳票、業務ルールを同時に全部変える
VBA 置き換えで本当に怖いのは、コード変換そのものより 業務仕様の取り落とし です。
Excel のシートや Access フォームには、コードに書かれていない運用ルールがかなり埋まっています。
全部を一気に変えると、「見た目は近いが月末だけ違う」みたいな事故が起きやすいです。
9.4 32bit / 64bit と外部参照を後回しにする
移行案件では、VBA コードそのものより、
Declare- 外部 DLL
- COM / ActiveX / OCX
- Office bitness
- 参照設定
が先に爆発することがよくあります。
ここを後ろに回すと、実装の終盤で一気につらくなります。7
9.5 VBScript の話と VBA の話を混同する
VBScript の段階的廃止は、VBA から見れば 一部依存の見直し の話です。
VBA 全体の終了と同じ意味ではありません。10
ここを混ぜると、「VBA が終わるらしい」という雑な社内情報だけが独り歩きしやすくなります。
10. まとめ
VBA をひとことで言うと、Office デスクトップアプリに密着した拡張言語 です。
Excel や Access のすぐそばで、利用者の手元の業務を自動化するには、今でもかなり実用的です。1
ただし、これからの実務で大事なのは、VBA を 万能な中心技術として扱わない ことです。
- ブラウザ / クロスプラットフォーム が欲しいなら、Office Scripts や Office Add-ins を見る45
- 無人実行 / サーバー処理 なら、Office Automation を避ける6
- 重いロジックや外部連携 は
.NETや別プロセスへ出す - Excel / Access がもう UI として苦しい なら、Windows アプリや Web アプリへ出す
要するに、答えは 「全部置き換える」でも「何も変えない」でもなく、「責務ごとに分けて、段階的に薄くする」 です。
VBA 資産は、雑に見ると古く見えます。
ただ、実務ではその中に 業務仕様、運用手順、帳票設計、現場の慣れ がかなり詰まっています。
だからこそ、置き換えは 翻訳 ではなく、整理 として進めるのが一番安全です。
11. 関連記事
- COM / ActiveX / OCX とは何か - 違いと関係をまとめて解説
.NET 8 の DLL を型付きで VBA から使う方法 - COM 公開 + dscom で TLB を生成するExcel 帳票出力をどう作るか - COM 自動化 / Open XML / テンプレート方式の判断表
12. 参考資料
-
Microsoft Learn, Office VBA Reference. “Office Visual Basic for Applications (VBA) is an event-driven programming language that enables you to extend Office applications.” ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
Microsoft Support, Work with VBA macros in Excel for the web. Excel for the web では VBA の作成・実行・編集はできません。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Microsoft Learn, Macros from the internet are blocked by default in Office. インターネット由来ファイルの VBA マクロは既定でブロックされます。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
Microsoft Learn, Differences between Office Scripts and VBA macros. VBA はデスクトップ中心、Office Scripts は安全でクロスプラットフォームなクラウドベースのソリューション向けであり、現時点ではデスクトップ Excel 機能のカバー範囲は VBA のほうが広いと説明されています。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
-
Microsoft Learn, Office Add-ins platform overview. Office Add-ins は HTML / CSS / JavaScript ベースで、Windows、Mac、iPad、ブラウザをまたいで動作し、中央配布にも向きます。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
Microsoft Support, Considerations for server-side Automation of Office. Microsoft は Office のサーバー側自動化を推奨・サポートしておらず、Open XML などの代替手段を勧めています。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
Microsoft Learn, 64-bit Visual Basic for Applications overview. Office 2019 / Microsoft 365 では 64bit が既定で、
PtrSafe、LongPtrなどの対応が必要になる場合があります。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 -
Microsoft Learn, Office for the web service description. Excel for the web では VBA マクロの作成・実行はできませんが、VBA を保持したブックの編集は可能です。 ↩
-
Microsoft Learn, Visual Basic for Applications (VBA) の言語リファレンス. 複数プラットフォーム向けの拡張を作る場合は Office Add-ins を参照するよう案内されています。 ↩ ↩2
-
Microsoft 365 Developer Blog, Prepare your VBA projects for VBScript deprecation in Windows. VBScript の段階的廃止が
.vbs実行やVBScript.RegExp依存の VBA プロジェクトへ与える影響、および Office Version 2508 以降での RegExp 対応について。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 -
Microsoft Learn, Run Office Scripts with Power Automate. Power Automate と Office Scripts を組み合わせた自動化、および必要ライセンスについて。 ↩ ↩2 ↩3
-
Microsoft Learn, Platform limits, requirements, and error messages for Office Scripts. Power Automate 連携時の呼び出し回数やタイムアウトなどの制限について。 ↩
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